OBT 人財マガジン

2011.09.14 : VOL123 UPDATED

この人に聞く

  • 株式会社カクヤス
    代表取締役社長 佐藤 順一さん

    規制緩和と市場縮小。
    二重苦を乗り越えた『強みを生み出し続ける力』(前編)

     

    縮小する一方の市場の中で、右肩上がりの成長を遂げるカクヤス。今では年商1000億円を超える同社だが、それまでの道のりは決して平坦ではない。東京23区全域にビール1本から無料配送する方針を打ち出すも、赤字店が続出。社内には反対意見が多く上がった。しかし、佐藤社長には確信に近いものがあった。「本当にお客さまの立場に立ったお届けサービスというのは世の中に存在していないから、真に価値があるなら必ずうまくいくはずだと。もっといえば、生かされるだろうと。生かされなければ、おかしいよねと。何にすがったかといえば、おそらくそういう思いだったのだろうと思います」。売り手の都合の範囲内での顧客満足では、競争力に結びつかない。成熟市場で成長するためにはリスクを取りながらも、顧客の想像を上回るサービスを提供できるか否かに掛かっているのではないだろうか。

  • [及川昭の視点]
    日本企業の世界市場でのシェアが様々な分野で揺らいでいる。それは、売上のかなりの部分をコモディ化した商品が占めており、利益が出にくいとわかっていても売上を確保するため、そうした商品を作り続けているのである。当然のことながら、こうした状況から早く脱する必要があるのだが、そのためには現状のビジネスモデルからの脱却が欠かせない。それは、例えば、消費財を単品で売らずに、サービスやインフラ等と組み合わせて売るといった発想が必要な時代である。重要なのは、最初に出来るだけ大きな経営の絵を描き、何を付加価値としてどこで需要を喚起し、どこで利益を上げるかといった絵が描けるかということである。
    今回の株式会社カクヤスさんでは、既に1998年に価格戦略から付加価値戦略へと大きく転換し様々な試行錯誤を経て今日の地位を築いている。同社の佐藤社長とお会いして経営リーダーとしての賢慮さが企業の将来を決めるということの重要性を感じざるを得なかった。

    聞き手:OBT協会  及川 昭
    企業の持続的な競争力強化に向けて、「人財の革新」と「組織変革」をサポート。現場の社員や次期幹部に対して、自社の現実の課題を題材に議論をコーディネートし、具体的な解決策を導き出すというプロセス(On the Business Training)を展開している。

  • 株式会社カクヤス http://www.kakuyasu.co.jp/
    1921年に、飲食店向けの業務用酒販店として創業。バブル崩壊後に業務用市場が縮小したことを受けて1992年に酒小売店「大安」を2店舗展開、家庭向けの酒販市場に参入する。1998年には無料宅配サービスを開始し、価格戦略から付加価値戦略へと大きく転換。2003年8月に東京23区全域での無料宅配網を完成させ、翌9月に酒販免許の規制が緩和されて淘汰の時代を迎える中、快進撃を続ける。2004年にはコールセンター運営子会社を立ち上げ、一括受注体制を確立(現在はカクヤス本体に統合)。2007年に飲食店向け通信販売「ミクリード」を、2010年には「オフィス・デポ・ジャパン」を子会社化し、『お届けビジネス』を拡大させている。
    企業データ/資本金:2億7889万5千円、売上高/794億円(2011年3月期実績)、従業員数/1039名(2011年3月末現在)

    JUNICHI SATO

    1959年生まれ。大学卒業後、祖父の代から続く合資会社カクヤス本店(現・株式会社カクヤス)に入社。1993年に3代目代表取締役社長に就任。1998年にディスカウント業態からの脱却を決意し、入社当時年商7億円弱・従業員16名であった同社を、年商800億円に迫る企業に育て上げる。

  • 優れた戦略は"偶然"から生まれる

    ────私どもは酒類メーカーや御社と近い業態の企業とも仕事をさせていただいていますので、ご業界の動向は実感しておりますが、市場が縮小している中で、御社はたいへん堅調に業績を伸ばしておられます。その過程ではいろいろな転換点がおありだったと思いますが、そこで社長が何を思い、どのような決断をされたのか。また、内部の組織的な課題をどう解決してこられたのか。今日は、そういったことをお聞きできればと思っております。

    お酒の業界は、かつては免許で守られた非常に閉鎖的な業界でした。互いのお客さんを取ってはいけないという、相互不可侵条約があった。そんな業界である程度割り切って商売をしていくとなると、軋轢もたくさん生じるといいますか。まあ、いろいろとありました(笑)。

    酒販には飲食店向けの業務用と家庭用の2つの大きなチャネルがあり、全国的に見ると業務用が25~30%くらいで、家庭用が約70%といわれています。東京は飲食店の数が多いので、業務用と家庭用は50%ずつくらい。その中で、カクヤスはもともと飲食店向けのベンダーでしたが、その業務用のマーケットがバブル崩壊で一気に縮小したんです。順調に伸びているときにはみんなで仲良くできても、みんなで仲良く縮みましょうとはいかないわけで、そこで競争が起こるんですね。

    しかし、今まで競争をしてこなかった業界ですから、何で競争するかというと値段しかない。マーケットは縮小し、価格は下がり、なおかつ不良債権が発生するというトリプルパンチです。これはもう業務用だけではやっていけないということで、ちょうどその当時、お酒のディスカウントショップが隆盛を極めていたこともあって、カクヤスも家庭用に参入していくわけです。

    ただ、当時の酒販免許は『人と場所に下りる』といって、『○丁目○番地の○○さん』に下りた免許は、経営者が変わるのも店舗を移転するのも基本的にNGなんです。一番近い酒屋まで100m以上ないといけないといった制約もありましたので、ディスカウントショップが出店したのはだいたい環七(※)の外側。

    ※環状第7号線。東京都大田区を基点に東京23区内を環状に回り、江戸川区臨海町に至る幹線道路。通称「環七(かんなな)」。

    ところが、当時のカクヤスは環七の内側で、車も入れないし人通りも少ない。そんな立地でディスカウントショップをやっても自分がお客さんなら来ないだろうな、というような場所でね。そんな店をやる経営者の心境って、あまりいいものではないんですよね。

    そうはいいながらも、やらなくてはいけないということでオープンするんですが、さすがに店で売れるとは思っていませんので、苦肉の策で配達をやろうと。ただし、1回300円の配達料はいただくことにして始めたんです。300円の根拠は何かといえば、アルバイトの時給が約1000円でしたから、1時間に3件くらいは運べるだろうと考えての金額です。

    商圏の切り方もわからなかったので、とりあえず半径1キロの円を描いてみました。そしたらそこに団地があって、3分の2までしか入らない。全部入るように描き直したら、半径が1.2キロになった。「カクヤスの1.2キロ商圏モデル」などと、詳細に分析して設定したかのごとくに言われていますが、実際は団地が欲しかったということなんです。

    ただ一つ言えるのは、1.2キロが1.5キロだったら、面積は実は1.56倍になります。その中の移動距離はおそらく倍になりますから、そうなると採算が合わない。仮に1キロの圏内に団地が全部入っていたら、半径が200メートル狭まるだけで面積は0.69倍になる。3割も減るんです。3割少ない売り上げで採算が合うかといえば、やはり難しかったかもしれません。微妙なところで、後から検証すると1.2キロというのは妥当な商圏設定だったと思いますね。

    優れた戦略は"トライ&エラー"から生まれる

    そんなことでディスカウント並みの価格でお届けを始めたら、不思議なことに配達だけでなく、立地が悪いはずの店の客数も増えたんです。理屈は簡単でした。1.2キロの商圏には、一般の酒屋さんしかなかったんですね。にもかかわらず、はるか環七の彼方にある大きなディスカウントショップをライバル視していた。競争相手を間違っているんですよね。

    だから「配達料300円です」と言うと、お客さまは「無料じゃないのか」とおっしゃる。我々はディスカウントと比べていましたので、彼らがやらない配達をするわけだから、それには料金をいただこうと思っていたのですが、実際のライバルは一般の酒屋さんです。酒屋さんは配達料なんか取りませんよね。お届けという一つの価値で郊外型のディスカウントに対抗するつもりが、結局戦った相手は一般の酒販店で、しかも勝てた理由は安さだった。当時の戦略がいかに稚拙だったかということです。

    ────それも、やってみて初めて学習されたということですね。

    そうです。

    ────私はそこが大事なところなのだろうと思うんです。

    そうですね。商圏もまずは半径1.2キロでやってみて、後で検証したらそれでしか成り立たないんだと。そこに一つの基軸ができるじゃないですか。それがすごく大事だと思いますね。

    300円の配達料も、売り上げは伸びていましたから、いただき続ける手もありますよね。今もいただいていたら、1日の配達件数は約1万2000件ですから、1日360万円。年間で十数億円を儲け損ねたことになります。でも、お客さまの中には両隣と3件一緒に注文される方もいましてね。すると1件100円じゃないですか。そんなに300円に抵抗があるのか、それなら何とかしなきゃいけないなと。

    そもそも配達料は人件費を考えてのことでしたが、店売りの人件費との差を計算してみたら、実は配達の方がかかっていなかったんです。なぜかといえば、1時間当たり3件どころか5件も6件も配達できていたのと、客単価が非常に高かったんですよ。

    ────まとめ買いをされるわけですね。

    そうです。ビール2ケース、3ケースは当たり前、当時で客単価が1万5000~6000円は出ていました。もはや配達料をいただく根拠がありませんから無料化を考えるのですが、客単価が下がったのでは成り立たない。そこで、最初はお買い上げ1万円以上を無料配送にしました。すると「ビールを2ケース買っても1万円にならない」と苦情がきた。そこで5000円以上にすると、「ビール1ケースじゃ持ってこないのか」という話になって。最後は3000円以上にしたら、1箱2980円の発泡酒が出てきちゃいましてね。

    結局すべて無料にするという、非常に格好の悪い撤廃の仕方をしましたね。でも結果としては、今でも5000円強の客単価が出ていますので、「ビール1本から無料配達」と言いながらも、お届けというのは結構まとめて買っていただけるんだなと思いますね。

    決めた戦略は妥協せず、徹底して貫く

    その後、27、28店舗を出したのとほぼ同時期の1996年から、お酒の消費が減り始めました。1996年のピーク時に約7兆1000億あった市場規模が、今は5兆円を割っていますから、どんどん小さくなっていったんです。なおかつ1998年に酒販免許の規制緩和が決まりました。今まではディスカウントショップや近所の酒屋さんが競争相手だったものが、大手スーパーやコンビニと戦わなくてはいけなくなる。つまり、競争相手の方が圧倒的に強いんですね。

    そして、1997年から3年連続で酒類市場が縮小しました。3年続けて減った市場は、今後も減り続ける。つまり、完全な構造不況に陥ったわけです。販促費を投じてシェア拡大に力を入れていたビールメーカーも、利益を確保する方向に変わるだろうと。それが何を意味するかといえば、メーカーの販促費に支えられてきたディスカウント商法はもう成り立たないということ。それが、2000年のこの段階でわかっているんです。それなのに多くのディスカウントがスタイルを変えずに安売りを続けて、潰れていきました。

    では、カクヤスはどうするか。価格や店づくりでは大手スーパーにはかなわない。利便性はコンビニが圧倒的に優位です。宅配はどうかといえば、みんなあまりやってない。しかも、うちは購入額の基準を設けずに無料配送していますから、これなら勝てるかもしれないなと。

    ただ、カクヤスがお届けでうまくいっていると聞けば、大手スーパーが参入してくるかもしれませんから、我々が生き残るには彼らがやらないことを実現しなくちゃいけない。そんな宅配はあるのかと思いながら世の中のお届けを見てみたら、ピザ屋さんでも何でも、必ずいろんな制約があるんですね。一つは地域の制約。店頭モデルに置き換えると、遠くからわざわざ来てくれたお客さまはウエルカムじゃないですか。でも宅配は、配達エリア外の人には「あなたには売らない」と言うんです。これっておかしくないか、というのが一つ。

    もう一つは、お店では缶ビール1本のお買い上げでも「ありがとうございます」ですよね。ところが配達は、「缶ビール1本では届けない」と言う。すべて売り手の都合なんです。では我々は、まずエリアの制約をなくそうと。そうはいっても『日本全国どこでも』はできませんから、まずは23区内に限定して『どこでも行きます』と。うちの事業目的には『いつでも』『どこへでも』『どれだけでも』とあるのですが、消費者にとってとてもわかりやすいこの『どこでも』というキーワードを、まずは手に入れようということです。

    そして、ロットの制約も設けない。本当は「いくら以上」と言いたいところですが、「ビール1本から届けます」と。次に、お届けのリードタイム。お約束できる最大限を計算したら、1.2キロの商圏では2時間です。このモデルで勝負するしかないんだろうなと考えたわけです。

    ──── 一般的には、そうした戦略が頭ではわかっていても、エリアやロット、時間といった制約がトレードオフになって、踏み切れないことが多いように思いますね。

    そうでしょうね。私は、それは『敷居』だと思っているんです。エリアの制約をつけて敷居をあげて、ロットや時間の制約でさらに敷居をあげて。誰もそんな高い敷居はまたがないというのが、それまでの売り方であってね。ですから、とりあえず敷居を全部下げて、お客さまにできるだけ入ってきていただこうと。入ってきたお客さまにどう対応するかは、今度は我々の問題になるわけですから。そういったことでスタートしたのが、ちょうど2000年。それまでの価格一辺倒の売り方から、『真に便利なお届け』という付加価値に会社の最も大きな戦略をシフトさせたわけです。

    優れた戦略は"危機との戦い"から生まれる

    ただ、価格戦略は答えが早く出ますが、『真に便利なお届け』という付加価値は、人によって感じ方が違うんですね。例えば高齢者の方には喜ばれても、自分で買いに行くことが苦ではない人は少しでも安いお店がよかったりするわけです。もっと難しいのは、一度利用していただかない限り、お届けの良さを実感してもらうことができない。価格戦略は、それこそ半年以内に必ず黒字転換します。ところが付加価値は時間がかかるんですね。あの当時で最低2年、普通は3年くらい黒字になるのにかかりました。

    23区全域で『いつでも』『どこでも』を実現するには、計算すると137店が必要でした。当時のカクヤスは28店。効果がすぐに出ない状況の中で、規制が緩和される2003年までの3年間に、137店を目指して出店していったんです。

    ────世の中の多くの企業が同じような状況にありながら、短期的な利益が長期的な利益よりも優先し、御社のような思い切った手が打てない。そういうケースが、本当に多いように思います。

    うちはオーナー経営ですから、すべてに自分の意思を貫けたのだと思いますね。上場会社では難しいでしょう。だって、何年間か大赤字を出すんですから。何よりも28店舗の会社が毎年30店以上出すは至難の技で、資金や人の確保はどうするのかといった、いろんな問題が起こるんです。

    今思えば笑ってしまうのですが、店長候補の中途採用のキャッチコピーが、「キミも明日から店長だ」。そう言って採用していました (笑)。当然、酒のプロではないから商品を知らない、接客もよくわからない。それはもう「わかった」と。「だけど頼むから、配達だけは間違えないで時間通りに行ってね」と。ただ1つ、これだけを言っていましたね。でも、そうやって100店まできたときに、実は60店近くが赤字という事態だったんです。

    ────それは、ある程度は予想されていたことだったのですか。

    まったく予想してないですね。もう少し売り上げが立つと思っていました。そもそもチェーン店というのは、赤字店が2割あると利益が出ないといわれています。ところが6割の店が赤字。利益が出ないどころの騒ぎじゃないですよね。でも137店を出さなくてはいけない。最終的には、羽田空港など住宅がない地域は除外して118店で埋めたのですが、あと20店舗くらいのところが一番しんどかったですね。それでも何とかやりくりをして、118店で『23区どこでも』をうたえるようになり、今の原型ができたんです。

    ところが、今は1日約1万2000件の配達をしているとお話しましたが、実は一般家庭のお届けだけでは、これでもまだ赤字です。おそらく損益分岐点は、1日2万件くらい。これは何かしなくてはいけないと周りを見回したら、天ぷら屋さんやお蕎麦屋さんといった、飲酒がメインではないけれど、でも扱っているという飲食店が結構あるよねと。

    よくよく調べると、都内に約11万件のお酒を扱う飲食店があるんです。カクヤス1店につき1000件の計算です。実はこれ、何にもやっていませんでした。カクヤスはもともと業務用の酒屋で営業マンがいましたから、この飲食店を何とか取り込もうとプロジェクトを立ち上げたら、これがものすごく当たったんですよ。通常、業務用の酒屋は、前日に入ったオーダーを朝まとめて積み込んでルート配送します。その後に受けたオーダーの配達は翌日になる。ところがうちはいつでも2時間で運びますし、値段もそこそこ安い。実はこの『すぐ来る』ということが、一般家庭よりも喜ばれたんです。

    ────業務用のインフラは、一般家庭向けと同じものが共有できるのですか。

    できます。家庭向けは缶ビール、飲食店は樽生ビールや瓶ビールといった商品群の違いはありますが、共通しているアイテムも結構あって、同じインフラで回せる。これが大きかったですね。2003年から2006年までの3年間で開拓した飲食店の売り上げが、それまで十数年をかけた一般家庭の売り上げを軽く超えてしまった。そうして最終的にそろばんが合ったのが、2006年ごろのことでした。

    競合が見向きもしない市場を、"相手軸思考"で総取りする

    ですから、ひと言でいってしまうと『結果オーライ』。家庭用と業務用というのは、そもそも販促の方法がまったく違って、家庭用はマーケティングとマーチャンダイジングですが、業務用はセールスなんです。この両方の部隊を持っている企業が、実はあまりない。うちはもともと業務用の酒屋で、小売もやっていたので両方の仕組みを回すことができたんですね。

    ────業務用を狙うにあたって、競合が関心を持たない比較的小さな飲食店をターゲットとされたことも大きいですね。

    そうです。小さなお蕎麦屋さんやお寿司屋さんは、当日「冷やしビール10本持ってきて」という世界ですから、大手の業務用酒販店にはできないんですよ。だから飲食店さんは、高いのを承知で近くの酒屋に頼んでいた。その酒屋が規制緩和で次々と廃業してしまいましたので、小さな飲食店の買い場がなくなっていたんです。そこにカクヤスがはまって、取引を一手にできた。これは大きかったですね。他社とシェアしていたら、おそらく友倒れしたと思います。

    ────他社が見向きもしない市場を取りに行ったという、そのご決断がとても重要なところだと私は思うんですね。オーナー経営だからできたとおっしゃいますが、世の中に数多くあるオーナー企業が思い切った決断ができているかというと、必ずしもそうとはいえない。やはりどうしても目の前のものを追うとか、コストがかかるからダメだとかね。この発想から脱却できるかどうかが、とても大きいのだろうなと思いますね。

    それはおそらく、相手の立場に立つということだと思いますね。売り手の立場と顧客の立場は、相反するんです。安くすれば儲からないし、お客さまは安い方がいいというようにね。お届けビジネスでいえば、遠方のお客さまの方がどうしたってコストはかかります。だから、配達エリア外には行かないという話になる。

    でもお客さまからすれば、近所に酒屋さんがあるのに、わざわざ遠くのカクヤスに頼んでくれているわけです。そのお客さまを、遠いというだけで粗末にする。これっておかしいじゃないですか。それが世の常になっているけれど、まったく逆だと思いますね。というように、すべておいて、常に相手の立場に立つという思考の軸を持たなければダメだと思っているんです。

    相手の立場に立つことの重要性を説く佐藤社長は、同時に、相手の立場に立って考えたサービスも「一発では当たらない」といいます。では、外れた場合にどのように修正し、顧客の声に近づけばいいのか。後半ではカクヤス流のサービスの磨き方と、佐藤社長が見据えるカクヤスの今後について伺います。

*続きは後編でどうぞ。
  規制緩和と市場縮小。 二重苦を乗り越えた『強みを生み出し続ける力』(後編)

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