OBT 人財マガジン

2013.03.13 : VOL159 UPDATED

経営人語

  • 事業の再構築とは人間の再構築から始まる!

    事業とは何かということを考えてみると「価値」であり、事業活動の全ては
    「価値を生み出す活動」であると言える。

    提供する側の価値に顧客が満足すれば、それに対して対価を支払い、事業として成立するが、
    その価値を感じなくなれば、顧客は次第に対価を支払わなくなりやがて事業として成立しなく
    なってくることは自明の理である。

    一方で、企業が提供する「価値」というのは、決して一様ではない。
    商品のような「目に見える価値」もあれば、サービス財のように「目に見えない価値」もある。
    また、それが絶対的なものと相対的なものがある。

    絶対的なものとは、顧客の立場からすると他に選択肢の無いもの、例えば、規制や特許で
    守られている製品や業界のデファクトスタンダードとなっているマイクロソフト等で顧客からすれば
    その製品を選択せざるを得ない絶対的な価値を持っている製品である。
    規制緩和で自由競争になったとはいえ、各家庭が電力を手に入れようと思えば、各地方の
    電力会社を通じて買うしかない。
    また、特許や規制ほどではないが、スーパーブランドと言われる、圧倒的な人気を誇る商品や
    サービス等も絶対的なものと言える。
    絶対的な価値の領域で戦っているので、企業では一般的に革新的な商品をいかにして開発するか
    という価値観が根強い。

    反対にそれと対象にあるのが相対的な価値といえる。
    相対的なものとは、顧客にとって「他に類似の選択肢が存在する価値」のことである。

    たとえば、トヨタ自動車が生産している車の多くは、決して「絶対的なもの」とはいえない。
    何故なら、競合他社も類似の商品を提供しているからである。
    おそらく日本企業のほとんどは、この相対的な領域の土俵で戦っている。
    ほかの製品や競合他社のサービスと比べて、「ちょっと安い」「ちょっと品質がいい」
    「ちょっと納期が早い」「ちょっとサービスがいい」等といった「ちょっとした違い」
    の有無が勝負のポイントであるため、その少しの違いを作り出せるかどうかが勝負の分かれ目
    となり、決定的な差につながる。

    では、その「ちょっとした違い」とは、誰がつくり出すのだろうか。
    どこから生まれるのだろうか。
    それは、言うまでもなく、第一線であり現場である。
    顧客接点にある第一線の人達の顧客への対応の仕方や現場における改善やコストダウン
    或いは生産性の向上等がきわめて重要なテーマとなってくる。
    現場の創意工夫や頑張りこそが「ちょっとした価値」を生み出す源泉なのである。

    それは単なる機能の提供ではなく、あくまでも価値に訴求するということであり、それが人という
    リソースが関わる意味であるし、その優劣が競争力の有無につながってくる。

    そのためには、自分達の事業や仕事の再定義が必要であろう。
    どのような視点で事業や仕事を捉えるか。
    どんな事業でも仕事でも必ず何かしらの価値を持っている。
    特に、そのサービスや製品を享受する顧客の側に立って提供するサービスや製品の意味を捉え直す
    ことが肝要であろう。

    捉えなおす、突き詰めていく、と顧客が潜在的に欲している価値が見えてくる。
    それに基づいて自分達が提供しているサービスや製品の価値を再定義することである。

    再定義した価値を実際に実現するためには、現場や第一線の人達の仕事に対する
    モチベーションや組織に対するロイヤリティ等が不可欠であり、それなくしては実現は困難である。

    まさに、戦略や施策、或いは制度等といったものではなく、人が競争力を生みだす源泉であることは
    論を俟たない。


    On the Business Training 協会  及川 昭