OBT 人財マガジン
2012.12.12 : VOL153 UPDATED
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視点を外において自分達を見ると何が見えるか!
人の気持ちと音楽との関係性を心理学的な視点で分析する研究があるが非常に興味深い。
例えば、コンサート等で音楽家の演奏等を聴いて聴衆の一人が感動するとその感動が他の聴衆にも波及してその場が興奮の渦に包まれるような状況になる、音楽と人間の感情との
関係のメカニズムの分析は、全てに共通する普遍的なものを我々に与えてくれる。
その場に闊達な元気のいい人間がいるとその元気が全体に波及していくということである。日本企業の競争力の劣化が叫ばれて久しいが、最大の要因は、ただ日常の自分の仕事に
埋没しているだけで組織に属している人間として本来やるべきことがきちんとやられて
いないことにある。今の多くの日本企業では、組織としての目標を全員がきちんと認識しそれを皆で協力して
達成していこうという極めてシンプルな組織の在り様が忘れ去られている。
ひとつには、・"あれもダメ""これも駄目"といった規制強化ばかりのコンプライアンスや内部統制強化
・"ノー残業規制強化"という会社の決めたルールでの縛り
・必要性やねらいに納得感が得られない単なる管理強化のための決済資料や報告資料等の
ペーパーワークの増加等々...その結果、働いている人達から次第に主体性や自主性が失われ、皆、朝から晩まで
パソコンにしがみつきお互いに何をやっているのかも全くわからない。
そして担当業務をただ黙々とこなしているだけでやり方を変えるとか、もっといい方法を考え
出す等といったところには関心が薄くお互いの意思疎通すらメールで行われているという現状。そして、組織内で何が新しいことをやろうとすると必ず否定的な反応が返ってくる。
また、出社や退社時の挨拶等もきちんとなされない、或いは仲間から何かしてもらっても
"ありがとう"のひとつも言えない等、要は小学生が出来ていることをいい大人が全く
できていないという笑えない事実がそこにある。そこには、組織の一員として周りのことを考えながら周囲にいい影響を与えていく等といった
人間として本来やるべきこと、協力して協働して働くというが忘れ去られている。これでは、競争力の源泉となる組織能力等全く培えるわけはない。
管理すること、分析することに喜びを感じる人達の増加で市場や顧客接点にいる第一線の
人達の目が死んでしまっているのである。そして、暗い顔で後ろ向きの発言ばかりしている人達がそれなりのポジションに就きある種の
力を持っていると思うと組織のパフォーマンス等は上がるわけはない。
どこの経営者も組織力を強化したいと言うが、組織力の向上というのは、社員1人1人が学習することによってのみ向上するものであって、個人の学習なくして組織の向上等はありえない。
然しながら、組織力の向上に本気で取り組むには、個人の学習が必須であると本気で
認識出来ているリーダーは非常に少ない。流行りの管理手法や人事制度等をいじくり回せば回すほど組織は逆にその勢いを失っていく
という人間や組織の本質が全く理解できていないのである。企業の停滞、業績悪化そして衰退や経営危機等全ては、人為的なものであり、いってみれば
人災である。激動する昨今の経営環境の中で、企業組織が本当の意味で変わっていくためには、組織を
構成し、動かしている人間そのものの"考え方や思考"が変わらない限り組織そのものの
変革等はあり得ない。成長しない経済、将来の不確実性が高まる中で、これまで経験したことの無い想定外の
状況では、過去の30年の延長線上の価値感では、もはや決して対応出来ないのである。客観的に外に視点を於いて自分達の在り様を見るといかにピントがずれているかが
よく見えてくる。
On the Business Training 協会 及川 昭