OBT 人財マガジン
2012.11.28 : VOL152 UPDATED
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組織が量産するサラリーマンではリーダーは育たない!
この時期、上場企業の決算公開が多いが、大方は非常厳しい状況にある。
また、国にも企業にも閉塞感や停滞感が蔓延している。
このような状況だからこそリーダーの先を見通す力や戦略性の差が勝ち負けに如実に表われ
てくる時代であることは間違いない。
もし、これから先の成長を目指すのであれば、従来の方法をベースにして考えるのではなく、
これまでのやり方そのものを根本から変える大胆さが必要にもかかわらず、日本或いは日本の
企業では、これがなかなか容易に出来ない。
出来ない大きな理由のひとつに日本企業では管理職の延長線上に経営職を置いてしまっている
ため経営というよりも管理を行っているというのが実態であり、管理一辺倒に陥っているのである。
言葉を換えれば、管理と調整に終始してしまっており、上から下まで中間管理職化している
のである。
ソフトバンクが米国の携帯電話会社を総額2兆円で買収するという。
日本企業では過去最高のM&Aといわれている。
多大なリスクを賭けて成長を目指そうとする孫正義氏。
創業から一貫してリスクをかけてきたからこそ今の孫正義氏があるように思える。
このような視点で考えると、本当の意味でリーダーとして育つためには、中小・零細企業の
経営者のような経験をさせることではないだろうか。
全ての意思決定を自分の思いのままに行えるようにする一方でその裏腹にある
『失敗すれば倒産する』という重責を負っているのだという強い緊張感がリーダーとして育つ
ためには必要なのである。
現場が自由に創意工夫し、自分の能力とスキルをフルに使う。
それは責任感や緊張感を伴うはずではあるが、その責任感や緊張感が成長をもたらすのである。
現場、例えば食品売り場のチーフが、売り場のデザインから販売する商品、価格、プロモーション
活動やマーケッティング活動、そしてパートさんの採用にいたるまで全てを自分の裁量で行える
ようにする。
本部のスタッフは、従来のように本部施策を現場に強制的に浸透させるようなやり方をとらず、
むしろ現場からの要請になるべく早く、なるべく柔軟に対応することを本部の役割とする。
これとは逆に老化した組織によくあるのは、「権限委譲」とはいいながらも、その実は監視だけを
強化して管理を強め、実施的な権限は与えず、数字だけを強要するやり方である。
これでは、評論家的サラリーマンを養成するだけで、リーダーは決して育たない。
組織にしがみつくサラリーマンを量産するのではなく、社員が日々喜びを実感でき、手ごたえを
感じられる組織を作る。
競争原理が人を育てる。確かにそうであろうが、業績給やストックオプションだけではうまく
機能しない。
インセンティブの問題というのは、人事部門がマニュアルを見ながら施策を作ればいいという
ものではない。
経営者の意思や見識、或いは哲学が反映されていなければならない。
だから、哲学が必要になる。
人のマネジメントというのは、人事制度ではなく、経営哲学の問題である。
一人一人が何をするのか、何をすれば評価されるのかというミッションを明確にしないといけない。
次にそのミッションを達成するために必要なスキルを身につけさせる教育をしてスタート地点を
そろえるための環境整備をしないとアンフェアである。
よくある間違いは、マスコミや社外への対応には非常に熱心にパワーを使うものの、社員との
コミュニケーションをマスコミや社外への対応以上に非常に重要であると本音で理解している
リーダーが非常に少ない。
こういうリーダーは、社員を利益を上げる単なる手段や道具としてしか見てない。
このため従業員は決して船には本気で乗らない。
会社が成長している時や業績が好調な時には、給料も上がるので経営トップが何をしていても
大して問題は生じない。
何故なら成長は全てを癒してくれるから。
しかし、不調になった瞬間に無策が全て表面化してしまう。
そして、急に「君達、奮起しろ」と言われてもしらけるだけである。
リーダーたる者、一部のスタッフの進言をただ鵜呑みにするのではなく、自ら、自分の目と耳で
顧客、現場の従業員との対話、意思疎通等を何よりも重視し、そこに時間を使い自分の考えと
責任の下で全ての意思決定を行う。
現在の日本という国や企業の停滞を考えた時、国や組織をリードするリーダーの役割とは、
一体どのようなものなのか。
つくづく考えさせられる。
On the Business Training 協会 及川 昭