OBT 人財マガジン
2012.05.23 : VOL140 UPDATED
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先の見えない時代だからこそ賢慮なリーダーが求められる!
改革のために必要なリーダーシップとは、
①「将来に向けての明確でわかりやすいビジョンの提示」そして
「どのようにしてそこに到達するのかという道筋とプロセスを詳細に示すこと」である。
つまり「我々が何を目指してどこに行くのかをわかりやすく示すこと」である。
そのためには、まず改革の目的を明確にしなければならない。
例えば、企業がこれから組織変革や業務改革をするとして、その改革は、
一体何を狙っているのか。
ただ改革をしようといったって、今まであったものを少し変えるだけでいいのか。
どこに問題があって、それをどう改善していくのか。
最終的に我が社の目指す姿とはどんなものなのか等ということがとても大事になってくる。
因みに最近の日本のもろもろの改革政策は、実にわかりにくい。
例えば、野田内閣が標榜している社会保障と税の一体改革等も何を目的にして、
改革の先に何があるのか。
それが曖昧になっているから、ちっとも先が見えてこない。
だから「何がどう変わろうと、何がどうしようと、俺にはそんなもの関係ない」と
興味や関心も持たない人達が増えるばかりである。
②次に改革の影響を受ける人達がそのことに賛同し、そのことを支持し、
そのことにロイヤリティをもってもらわなければどんな改革も決して実現しない。
そのために改革の目的や改革の意味を時間をかけて十分に理解・納得してもらうことが
絶対条件となってくる。紙で配布したとか広報した等といったレベルでは誰も理解はしない。
時間をかけて足を運んで対面で理解・納得を得るという努力が短期的には手間でも
長期的にはいい結果につながることは間違いない。
要は、リーダーの改革への意気込み、改革への思いを直接伝え、直接語ることに尽きる。
何故ならば、人間というのは、感情の動物である。
組織を、国を、こう変えればこのようにいい状態になると頭ではわかっていても
「自分の存在感」や「自分は聞いていない」「あいつが主導では面白くない」等と
感じ始めたら改革等進展しない。
③もう一つ重要なことは、すべての情報を開示することである。
改革の影響を受ける人達を信頼しているということを彼ら(本人)に感じさせなければならない。
開示していないということは、信頼していないと受け取られてしまう。
「全てをオープンにしたら大変なことになってしまう」とか「ごちゃごちゃになってうまく
まとまらなくなる」といったような考え方が逆に弊害になってしまうのである。
「半分はオープンにしたが半分は開示していない」等ということでは、改革は出来ない。
国民は、社員はすべての情報が知らされたと思っている。
ところが少しでも知らされていないことがわかった途端、改革は失敗する。
もちろんそれにはリスクはあるかもしれない。
一方で、秘密裏にしておいたことが露見した時はその倍旧のリスクを負わなければならない
ということも事実である。
沖縄の基地問題等は、その格好な例である。
誰も政府の発表していること等信用していないのである。
いずれにしても、改革を遂行していく上で、その影響を受ける国民の、社員の信用を
失うことがあってはいけない。
改革にはリーダーの決断と勇気が不可避である。
また、改革の際に最も厄介なのが、組織内部の様々ななしがらみである。
しがらみは外部からの介入を嫌い、自分達の安定のためにただ慣れ合いを続けている
だけである。
日本も少子高齢化の中でこの先どこに行くのか...。
例えば、過去20年間、デフレ経済に陥ることなく3%程度の成長が実現出来ていれば、
GDPは、900兆円近くにもなり現在のような財政危機もなかったはずである。
どのようにして成長を実現し、未来に安心して向かうことが出来る組織や国を創るのかが
国や企業を率いるリーダーの最大の役割であろう。
政治でも経営でもリーダーシップの本質は何ら変わらない。
将来に向けての展望や若い世代の幸せのために、慣れ合いを捨てて我々一人一人が
自らを変えていく力が再生では不可欠である。
今ほどリーダーに賢慮が求められる時代はないであろう。
On the Business Training 協会 及川 昭