OBT 人財マガジン
2012.03.28 : VOL136 UPDATED
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成熟化社会における成長とは何か!
昨今、ベストセラーとなっている五木寛之さんの「下山の思想」にはとても共感できるものがある。五木さんの見解は、まさに本質を指摘していると思う。成長しない経済の時代、人口減少の時代、少子高齢化の時代、未だかつて誰もが経験したことの無い未曾有の変化の時代に突入しつつある今、この時代の成長の定義をどのように考えるべきなのだろうか。かつての高度成長期から延々と追求してきたいわゆる、「大量生産、大量販売、大量消費」といった経済システム。そして前年対比に代表される"常に前年よりも伸びることが是とされてきた成長"のパラダイム。ダニエル・ピンク氏はその著書『フリーエージェント社会の到来』の中で、これからは「個人の時代」になると予測し、個人と組織の構造が、「巨大な生産手段が不要になってくる」という構造的変化を促し、これまでの「集中型」から再び産業革命以前の「分散型」に戻ってきてくると主張している。そうなると、規模を追求する経済システムは必然的に崩壊していくであろう。規模を追求するパラダイムでは、売上や利益のレベルを指摘する話は多いものの、どのような製品をどのように作るか等といった話はとんと出てこない。指標をもとにした分析チックな話は多いものの、現場感覚がなくどこの企業の経営をしているのか甚だ疑問が残る。効率性を追求するシステム、規模の拡大により成長を目指すという方策は、必然的に生産性を追求しなければならない。その結果、あらゆる仕事で分業化、マニュアル化、画一化、標準化が進展する。一方で、働いている人たちの自己判断力や自己決定力を喪失させ、仕事に対する喜びややりがいを失わせている。働いている人たちの目から輝きが消え、停滞感や閉塞感を招いているのが実情である。収益性や効率性ではなく、心から自社を愛する、心底から我が社の製品を愛するという気持ちなしに真に質の高い成長等望むべくもない。短期間の間に世界第二位の経済大国に上り詰めた中国。最近、ひき逃げや高速鉄道の事故等が続き、世界を驚かせており官僚や医師等による汚職や拝金主義等の蔓延、商道徳や順法精神等の欠如。これを本当に成長というのだろうか。量の拡大に執着する成長の落とし穴と思えるし、これは成長ではなく、単に膨張しているだけといえる。企業も国も成長を量や前年比に求める価値観から脱却し、「我が社ならではの成長の構図」「日本らしい成長の方策」を模索していくべきでないだろうか。そうでなければ、組織で働く人たちも国民も心から決して幸福であるという実感が得られない。成熟化社会における成長とは一体何なのか。かなり前から我々は、それに気づいていながらも気づかないふりをしてきただけである。本当に真剣に考えなければならない時期が今到来したということである。