OBT 人財マガジン

2012.03.14 : VOL135 UPDATED

経営人語

  • 国も企業も成長が求心力!

    日本の国も日本の企業も等しく成長に向けた壁に直面している。
    そのために、我々国民も企業人にも停滞感や疲弊感が強く漂っている。
    成長しない中での政策や経営は緊縮財政やコストカットということになり、
    すべてが縮小均衡という状態になる。
    そのために、イノベーションやダイナミズム等といったことはおよそ生じなくなり、
    ますます停滞状態に陥る。国も企業も、成長しなければ、国民の社員の
    ロイヤリティやモチベーションは高められない。

    成長を企業という観点でもう少し詳細に捉えて見ると、成長するための要因として、
    「規模の拡大による成長」「知識や知見の蓄積・深化による経験効果による成長」
    「事業間のシナジー効果による成長」等様々な方策が考えられるが、どのような方策で
    成長させるのか、まさに経営の意思決定に他ならない。

    いずれにしても、最も多いパターンは規模の拡大により成長を図るという選択肢であろう。
    従って、その方向性として、経済成長や市場成長のポテンシャルの高い新興諸国へ
    展開させるという、いわゆる海外進出、或いは同業他社との合併や買収で規模を
    拡大させるM&Aといわれるものである。

    買収や合併といったM&Aが以前のような特別に暗いイメージはなくなり、昨今は、
    企業の成長に向けた戦略の積極的な選択肢としてクローズアップされてきた。
    スピートが求められる時代、時間を買うという観点では非常に有効な選択肢といえるし、
    そのために、M&Aの件数も飛躍的に増加してきている。
    本来、M&Aという合併や統合は、単なる規模といった量的な側面の獲得だけではなく、
    2つの組織が持っている異なった能力の組み合わせによる新たな競争優位の構築等が
    戦略的にも望ましいはずである。

    然しながら、当初の計画通り、本来の目的どおり成功している確率はさほど高くないと
    いわれている。成長に向けての経営資源を他社に求めたにもかかわらず、意図した
    通りのパフォーマンスが上がらないという事例が多い。

    M&Aという表現は、通常複数の企業が合体する合併、統合という概念と、もうひとつは、
    株式を取得して支配力を強化するという買収という概念がある。
    後者の場合、ホールディングスを中心に傘下に複数の事業会社が存在するといった
    パターンである。この場合の問題は、経営資源や人的資源の統合がほとんどないので、
    事業会社間のシナジーや経験効果による知見・知識の蓄積効果等もほとんどない。
    単に各種の事業会社がひとつの持ち株会社の下に集められただけに過ぎない状態と
    なっている例が非常に多く散見される。

    決算数値を連結で捉えるといった規模のみの価値感ではなく、新たなビジネスモデル
    の構築や競争優位性をM&Aという戦略によって確立するといったものでなければ、
    全く意味を持たないのではないだろうか。

    成長するためにM&Aという方策を駆使しても、規模の追求だけに終始していると、
    単なるハード面における統合のシナジーを生み出せても、人材面や知的資産等の
    シナジーは全く生まれない。

    国も企業も成長により、国民の目を、社員の考えを前向きに、上向きにしない限り、
    この閉塞感から脱却できない。

    然しながら、これまでの単なる規模の拡大を求め、効率性を追求する成長の方策から
    脱却し、この成熟化時代にマッチした新しい成長の方程式を構築しなければならない
    のではないだろうか。