OBT 人財マガジン
2012.02.08 : VOL133 UPDATED
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「志立たねば、天下のことは何一つ成し遂げることは出来ない!」
日本という国は一体どこに向かっているのか、かつて経験したことのない環境に遭遇し戸惑っている。また、多くの日本企業も然りである。その中でも特に電機産業は、大変な危機に直面している。国も企業も「未知の大陸」の中で、これからの生き方と進むべき方向を見定めなければならない。リーダーと呼ばれる人たちの重要な要件の1つに、「方向性を決める」ことがある。何故、将来の方向性を定められないのだろうか?昨今は、政治の世界でも、経済の世界でも、そして企業経営においても「本質的な議論」が非常に少ない。表面的且つ対症療法的な各論に終始したり、明日、明後日の売り上げの話や制度や器の議論ばかりで、「基本的な考え方」が非常になおざりにされてしまっている。今の日本は、あっちもこっちも各論分化に浸りきってしまっている。選挙を意識するあまりに、それに予定調和的になる政治、経営トップの考えや意向に過剰に適応しようとする多くの企業人。日本の政治や企業経営の最大の問題は、大きいことがいいことだと思い込んでいることにある。自分達でも手に負えないような大組織のまま、それをいじくり回しているにすぎない。企業組織では、目先のことにふられ、企業統治や法令順守、そして残業抑制という労働規制等でがんじがらめになり疲弊しきっている現場。これで新興国との競争を戦いぬけると思っているのだろうか。要は、単なる形だけの合理性を整えようとするあまり、本質的な問題の先送りを続けることが、国も企業も一層の衰退に向かわせているという自覚が、この国のリーダーに、そして企業のリーダー達に本当にあるのだろうか。特に将来に向けての意思決定は、どんなに分析してもその成否は不確実であり、既知のものよりも未知の部分が圧倒的に多い。然しながら、将来を予測は出来ないものの創ることは出来る。創る上で重要なことは、一体この国を、将来どのような国にしたいのか、国民にどのような暮らしをさせたいのか。この事業を通して世の中に何を問いたいのか、何を実現したいのか等といったリーダーの志であり、リーダーの思いに尽きるのではないだろうか。将来の不確実性を担保しえるものがあるとすれば、根源的なものに立ちかえった能動的なチャレンジ精神を支える志であり思いに尽きる。明治維新の志士達の精神的支柱といわれた「陽明学」をつくり上げた王陽明の「志が立たねば、天下のことは何一つ成し遂げることは出来ない」という言葉を多くのリーダーは、自問すべきではなかろうか。