OBT 人財マガジン
2012.01.25 : VOL132 UPDATED
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業績は向上させたいが、やり方は変えたくない企業が多い。
今、日本の産業構造は大きな変動にさらされている。好況の時は、どの企業も拡大路線をとるだけで、相対的なランキング等は変わらないが、不況の時には、倒産、再編、吸収合併等いろいろな形で業界の構造が変わる可能性が多い。経済が不況の時に出来ることは後ろ向きのことが多い。コストを徹底的に切り詰め、競争力のある分野に業務を集中し、資源の手当を厚くしていざという時に備える。こうしたマクロレベルでの経済の変化に企業の生き残り方を整理して見ると、概ね下記の3つに集約される。①もっと頑張る経済が右肩あがりの時は、これで伸びた企業が多い。同質化競争の中で他の企業よりも少しでも安く効率的に、上手に販売することが成功の秘訣であった。また、現在は多くの企業が、より大きな成長のチャンスを獲得しようとして、急速な拡大をしているアジア市場に戦いを展開している。このアジア市場の拡大競争を勝ち抜くためには、日本の同業他社、韓国や中国の企業、そして欧米の企業群との熾烈な同質的な拡大競争が待っている。然しながら、他の企業と同じことしか出来ない企業は次第にじり貧になっていく。そして、②差別化顧客ニーズを見定めながら、優位性を活かせる土俵を設定し他の企業との違いを打ち出し、差異化している領域にフォーカスした戦い方をしている企業。③競争相手を減らす構造不況業種といわれる分野では、合併、吸収、そして最も単純な方法はM&Aである。土木・流通・中小メーカー等国内市場の適正規模を明らかに超える過剰な企業数と供給力。多くの分野で過剰供給、過剰企業の状況に陥っている。これを打破するためには、合併や吸収によって競争相手と一緒になり、競争相手の数を減らすという方法である。また、即効性という観点で考えるとM&A等であろうし、特に不況期には重要である。いずれにしても、限られた市場の中で激しい競争に生き残るためには、2つの方法しか考えられない。ひとつは、製品、サービスで差別化を進めるというやり方。もうひとつは、合併や吸収によって競争相手と一緒になり、競合の数を減らすという選択肢である。伸びない市場、成長しない経済の中では、市場が成熟化して成長が止まっても、相も変わらず顧客を大きなマスとしてとらえた商売をしていては、売り上げも利益も伸びない市場をいくつかのセグメントに分けて、それぞれのセグメントによって違った売り方を工夫することが求められる。そうした方法に転換している企業は成功を収めている。例えば、流通業界、少子高齢化で市場は成熟化を始め、店舗は過剰気味、インターネット販売等新たな形の小売業が旧来の店舗小売業を脅かす存在となっている。百貨店や大型スーパー等旧来型の小売業は、売り上げを大幅に下げている一方で、ユニクロやニトリに代表されるファストファッションや低価格家具の店が店舗数を急拡大している。右肩上がりの時代には、生産と消費の場を効率的につなげ、より多くの製品をより低コストで流通させることがマーケティングの基本であった。いわゆるマスマーケティングである。そのために旧来のマスマーケティングでは、問屋やメーカーの影響力が非常に強かったのに対し、最近のサプライチェーンでは小売業が主軸になるチャネル形成が行われ、チャネルリーダーが川上から川下に移っている。課題は、商品を効率的に生産から消費に結びつけるだけでなく、消費者により高い付加価値を提供するビジネスモデルの展開が求められる。ITの積極的活用、安心・安全を強調した商品展開、高齢化社会に焦点を絞った新たなビジネスモデルの開発等。市場環境も技術も大きく変わる中では、そうしたセグメントを常時、見直す必要がある。同じセグメント分類で商売を続けていれば、売り上げの伸びは止まるし、利益率は次第に低下することになる。自社が戦う土俵をきちんと設定し、そこで何を売りにするのか、そしてその売りとなるものに資源を集中して、徹底的に磨きあげる。そして、「戦略や事業計画だけでは何も変わらない。それを実行して成果に結実させるのは人間である。」成功する企業は、人の果たす役割の重要性を深く理解しているのである。今回のスーパーホテルの経営スタイルは、成長しない経済下にあって、そのことの重要さを改めて我々に示唆しているように思える。