OBT 人財マガジン
2011.12.07 : VOL129 UPDATED
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行き過ぎた資本主義へのレジスタンス!
ソーシャル・イノベーションは、昨今のトレンドのひとつになっているが、この背景には、行き過ぎた資本主義により、組織も人も自分達の利益追求だけが、その目的となってしまった。米国の政治家であったベンジャミンフランクリンは"勤勉さ質素"を説いた。思想家で詩人の米国のヘンリー・デイビット・ソロ-は「人間の向上を間違いなく阻害するのは、生活の快適さを追求する道具である」と主張していたが、結果はどうであろうか。大量に作り大量に販売していくことが重要となり、そのために戦略やマーケティング等が台頭した。いかにして多くの利益を手にするか、それも人よりも競合よりも。そして、それが社会におけるひとつの大きな評価となってきた。その結果、次第に「幸せのバローメーターもどのように生きるかといった生き方というレベルではなく、いかに多くのものを持つか」というところに移ってしまった。然しながら、個人でいえば、所得と幸福感との間に本当に因果関係があるのだろうか?そして企業組織では、獲得利益と社員の遣り甲斐や働きがい、或いは幸せと相関関係が存在するのだろうか?今の世情を見ていると非常に大きな疑問がある。これは、現在の社会経済システムが市場を中心に展開されるようになってきているからで、市場の持っている利潤を最大化するということにその価値をおいているからである。つまり、単に、多くの利益を上げている企業を優秀企業とする、或いはお金持ちがかっこいいという価値観から、社会のために貢献する企業、或いは社会に配慮した金持ちがかっこいいという評価軸に変えていくことである。そのためには、いかに多くのものを効率よく作って、大量に販売するかという競争メカニズムを、社会的に配慮された市場メカニズムに変えることが必要になってくる。このような変革を行うためには、従来の国や行政が行ってきた非市場で啓発的な取り組みでは甚だ不十分で、まずは市場の中から変革する必要がある。こういった背景には従来の縦割りの行政サービスでは
十分に解決できない問題が社会問題として浮上してきたことにもある。いずれにしても少子高齢化や福祉・医療の拡充、環境問題等こうした社会問題の解決を図るために、NPOやボランティア団体など非営利組織に加えて、営利組織であっても社会的課題の解決を目的として活動する組織や起業家が必要とされる。従来の無償のボランティアや慈善事業と違い、寄付や寄贈ではなく課題解決に焦点をあわせており、その解決策にビジネスの手法を取り入れている。これらの組織や起業家に共通するのは、組織を率いるリーダーや構成する人々の「社会のために何かをしたい」という思いや意識、熱意の強さや「何かをしなければ」「何とかしたい」という使命感や責任感の強さである。そして、その使命感や責任感が周囲や他者を動かし、大きな流れにつながっていくということであろう。企業も人も環境に生かされている生き物であるから、環境との関わりを無視して自分達さえ良ければというスタンスでは成立しない。人も企業もそれがどのような形であれ、生かされている環境を良くしていくための積極的な関わりが求められるし、それが我々が長期的に永続していくための必要条件ではなく、絶対条件化していくであろう。