OBT 人財マガジン

2011.11.24 : VOL128 UPDATED

経営人語

  • 需要減少時代の商品をどのようなに定義すべきか!

    世界最速で本格的な人口減少時代に突入した我が国では、
    作り手、売り手は本当に頭を使わなければモノが売れない時代である。

    モノは飽和状態で日常生活において、モノの持つ機能性への必要度が
    低下してきており、そのため消費は、個人的な意味や価値といった
    心理的要因を重視する方向に重点が移っている。

    心理的要因とは、顧客は商品や製品を購入しているのではなく、いってみれば、
    自分の用事を片付けるために、その製品や商品を購入しているということである。

    用事という視点で、企業のマーケティングを見てみるとその大方は、
    間違えているといえる。

    その代表例として、ひとつは、「商品カテゴリー別の定義」というものがあるが、
    顧客の日常生活と商品カテゴリーとは何ら関係ない。
    また、多くの企業で、自社の顧客を「人口統計的なカテゴリーで分類」しようと
    している。例えば、年齢である。

    年齢の高い層は、シンプルなものを好むという仮説となるが一体本当だろうか?
    ユーザーの年齢とシンプルさを好むという傾向の間に勿論、相関関係はあるが
    年齢により、ターゲット市場が決まるという仮定は、2つのリスクを生じさせる。

        ① シンプルさを高く評価する若い消費者という市場機会を逃し、
            結果的に販売の可能性を人為的に逃してしまう。
        ② 新テクノロジーに関心のある年配の消費者を遠ざけてしまう。

    多くの場合、「用事」と「商品カテゴリー別定義」や「人口統計学的な分類」との
    間の結びつきはほとんど存在しないのである。

    「商品カテゴリー別定義」や「人口統計学的な分類」の根底にあるパラダイムは
    紛れもなく供給者としての視点、論理である。
    需要は減少、供給は過多という時代に入っても相も変わらず、商品軸の発想で
    商品ありきのパラダイムの企業が多いことには驚かされる。

    一般的に売り手が商品と考えているのは、顧客に提供するモノ、従って企業は、
    ここに全力投球している。ところが顧客から見れば、この商品は目的を達成する
    ための手段ではあるが、最終的な目的では決してない。

    「用事」という視点で見ると顧客の目的は、それを使用することによって
    享受できる価値であろう。

    顧客の用事という概念は、その人が解決したい問題、例えば
    「顧客は1/4のドリルが欲しいのではなくて、1/4の穴を欲しているのである」という
    セオドアレビットの名言に象徴される。

    用事は、まさに視点を「モノ」ではなく「コト」という領域に移動させなければ見えて
    こない。商品軸、モノという価値観から脱却しないと、顧客のシーズや顧客の背景に
    ある欲求等は決して捉えられず、そこにあるのは価格競争という不毛さだけである。

    従って、売り手は顧客の目的に仮説を立てて、これに合致したソフトをハードと
    共に供給すべきである。

    要は、用事に関した市場機会の発見が重要ということである。

    この実現のためには、基本的な経営の仕組みを変えなければならない。

    仕組みが硬直状態で昔とほとんど変わっていない場合は、行動も昔のままである。
    この仕組みに変革を起こしてこそ行動が変わる。特に遅れているのは、商品開発や
    営業という機能であり、相当古い価値観がはびこっている。

    未だに、営業の生産性とか営業の活動管理レベルというアプローチをしている企業は
    非常に多い。