OBT 人財マガジン
2011.09.28 : VOL124 UPDATED
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どの領域で戦うか、どこに成長のステージを見出すのか!
幅広く何でも出来る会社を目指すのか、特定の領域に絞ってひとつのことしかやれない会社にするのか、どちらの方が将来に向けて可能性があるだろうか。経営の永遠のテーマであろう。かつては、総合電機、総合商社、総合建設(ゼネコン)、総合デベロッパー、総合スーパー等......「総合」の冠は企業の強さの象徴だった。不況が到来しても、必ずどこか景気の良い部門があるので、全体としては業績の落ち込みを最小限度に食い止めることができたからである。然しながら、現在では、その"総合企業"が曲がり角を迎えて久しい。ゼネコンはバブル期に総合ゆえに傷口を広げ、スーパーは収益低下に悩み、扱い商品を絞り込む専門化の道を歩んでいる。「ラーメンからミサイルまで」をキャッチフレーズにしていた総合商社も、つい昨今まで悪化した収益構造の改革に追われ将来展望を見いだせないでいた。総合経営で規模拡大を追うやり方に限界が見えてきたにもかかわらず、拡大志向になじんでしまっていたるため、撤退とか断念という言葉に免疫がないのであろう。経済成長が終焉した今、広げすぎた経営資源が非常に重荷になる。収益が上がらない、利益の出ない事業が圧倒的に増えているのに、社内でもたれ合いが起き、赤字に対する危機感が鈍くなっているため整理・縮小し、絞り込むということに対する心理的抵抗感が根強い。一方で、絞り込みは、その狭いところに資源を集中するから、その集中のおかげで集中の結果で生み出される武器が有効となり、差別化が可能となる。然しながら、絞り込みには「狭さ」からくる限界という懸念がある。狙う領域が小さすぎるということである。集中あるいは絞り込みが、「狭さ」というデメリットだけを持つのでは決してない。絞り込みが「狭いながらも」成功を生み出し、その成功からさまざまな波及効果が生まれて、それが次の成功へとつながっていく事例は多い。集中によって一つ突破口が聞かれれば、集中をしなかった分野の活動にもプラスの波及効果が及び、絞り込みから逆に拡がりが生まれるのである。集中や絞り込みを行なうからこそ、成功が生まれ波及効果が生まれ、それが優位性や強さとして結実していく。間口を広げて幅広くいろいろな商品を取り扱うことで顧客価値を獲得するのか、狭い領域を深く掘り下げて高度な専門性を培うことにより、横に展開していくことにより、優位性を獲得するのか、まさに戦略そのものといえる。肝心なことは、そこに顧客がいるから、そこにニーズがあるから、そこに引き合いがあるから事業範囲を広げるというのは、あまりにも浅慮といえる。無策な戦線の拡大は、資源の拡散を招くだけで何らの強みの構築につながらない。将来の可能性やあるべき姿を、どこまで深く考え続けて取り組むべき事業や取扱商品を選択するかという賢慮さが、まさに現在のリーダーには問われるところである。