OBT 人財マガジン
2011.08.24 : VOL122 UPDATED
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国際化で成長していくために必要なものは何か!
日本企業を取り巻く環境は一層厳しくなってきている。国内市場を見れば、総人口の減少と少子高齢化による国内市場の縮小という厳しい現実に直面し、海外に市場を求めても円高、75円台に急伸した円相場等、大変難しい状況に追い込まれつつある。生き残りを賭け、国内の空洞化リスクを抱えつつも新たなグローバル戦略に活路を求め、円高を利用した海外企業のM&Aや海外への生産移転が一層増大していくであろう。グローバル戦略を軌道に乗せれば、企業は着実に強くなるであろうが、世界で戦い市場の評価を勝ち取るのは容易ではないし、円高から逃れるためだけの安易な海外展開はマイナス面も大きい。要は、真の成長を考えるのであれば、海外市場での売上拡大をもって、国際化が実現したと考えるのは大きな誤りである。国際化ということを考えて見れば、自社の事業を国境を超えて広い地域に展開し、面的な広がりを持たせることにより、新たな成長を目指すということに他ならない。そのために、進出する国において、その市場にフィットした事業システムをつくり上げなければならない。この事業システムのつくり方によって、その国の市場ではじめて競争優位を持った事業活動ができる。進出国の市場において事業システムをつくり上げるということは、事業システムのどの機能を、どの程度まで立ち上げる必要があるのかという問題に直面する。R&D、生産、販売といった事業システムの全てのプロセスを一括して立ち上げる必要があるのか、または販売部門などに限定した一部だけにするのかという問題である。事業システムとは、商品や製品或いはサービス等を開発し、顧客に提供するという一連のプロセスそのものである。もう一方で、開発・生産、販売というプロセスを通じて様々な情報や知識等がその事業システムを流れる。このような情報の流れと学習によって、組織内に技術やノウハウなどといった経営資源が蓄積されていく。そして日本国内における事業システムと、進出国において構築した事業システムとの様々な相互作用がなされることにより、事業システムの改善や補強等が繰り返され、真のグローバルな事業システムの構築が可能となってくる。要するに、海外展開を通して、その企業が経営資源の蓄積を国際的に進展させていくレベルが先行きの競争力に結実していくということである。経営資源の裏付けの無い、国際化による成長拡大という戦略は、単なる円高等の追い風に支援されたラッキーな成長にとどまり、競争力の構築につながらず、成長も決して持続しないであろう。