OBT 人財マガジン
2011.08.10 : VOL121 UPDATED
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成長の終焉と事業構造の転換
どんな厳しい時代にも企業として持続的に成長していくためには、常に変わり続けていかなければならないことは論をまたない。何故ならば、既存事業の成長の先にあるのは成熟であり、それは、需要の飽和、或いは突然の技術の革新等からもたらされるもので、事業の成長はやがて終わりを迎える。日本企業を取り巻く環境は一層厳しくなってきている。国内市場を見れば、総人口の減少と少子高齢化、そして市場の縮小という大きな課題がある。要は、経済も市場も成長が完全に終焉したということである。海外には、新興国に代表される成長市場はあるものの、アジア企業の台頭により競争はますます激化していくであろう。因みに中国や韓国等の台頭は、日本の個々の産業がこれまで持っていた競争力を一変させてしまうほどの出来事なのである。いずれにしても外部環境の変化には、常に既存事業の成熟というリスクが潜んでいる。そのリスクを乗り越えて更に成長を遂げていくためには、「企業全体の構造」そのものを根本から作り変える必要がある。そのひとつが、事業の構造を転換するということである。然しながら、日本企業で多く見受けられるのは、既存の事業の競争力が非常に乏しくなってきているのに、売上高を増やすために規模の拡大という策を一貫して講じているケースである。これは、事業を続けることそのものが目的となってしまっているのである。企業そのものは、永遠でなければならないが、個々の事業までもが永遠である必要等全くないのであるが。しかし、これは、言うは易しで、これまでの自分達の事業から撤退して、新しいものに姿を変えていくことに対する決断の難しさであろう。そのために既存事業の成熟化や国内市場の成長終焉という事実ときちんと向き合わずに、いたずらに対処療法を繰り返すことに時間を費やし、事業構造の転換という改革に向けてのスタートを大きく見誤ってしまった。このような事態をもたらしたのは、自分達の事業や技術力或いは経営力等に対する大いなる過信であろう。成長の終焉という強大なリスクを超えて企業が成長していくためには、これまできちん向き合ってこなかった自分達の事業、自分達の技術そして経営力等が、"決して強くなかった"という現実をきちんと直視して、企業の構造を根底から創り変えなければ、ただ衰退あるのみという認識が重要であろう。