OBT 人財マガジン
2011.06.22 : VOL118 UPDATED
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経営の目的は、利己的行動か利他的行動か。
トレードオフを超えて経営に新しい価値観を!企業経営には、いい循環と悪い循環があるように思える。その違いは、何を起点にして、結果として何を獲得するか、そのためにどのような循環を描くかということに尽きるのではないだろうか。悪い循環に入っている企業は、自分たちが環境の中で生きており、環境に生かされている生き物であるという本質的なことを、忘れてしまっているように思える。経営とは、利益の最大化を目指すまさに利己的な活動であるが、近視眼的に今の利益ばかりを追いかけてきて何か大切なものを失ってしまったように思える。様々な事業活動をいかに構築するかということにはパワーを注いできたが、社会の基本ニーズにいかにして答えるか等といった価値観が、非常に欠如してしまっている。2011年3月11日発生した東北地方太平洋沖地震の発生により、未曾有の大災害に対して様々な支援の手が差し伸べられている。企業レベル、個人レベルを問わず義捐金や物資を無償で提供、また、数多くのボランテイの参加等。災害時は、やや極端な例だとしても、我々は自分の時間や手間を割いて他人を助けようとする傾向がある。大雪による列車の運行停止で、高校入試に遅れそうになった親子連れがヒッチハイクを試み、たまたま乗せてくれたトラック運転手が100キロほど遠回りして、受験会場まで送り届けてくれ、ヨコヤマとだけ名乗って去って行った。何故、彼はそこまでしたのだろう?路上で転んだ人を助け起こしたり、電車やバスで席を譲るなどの経験の無い人は少ないであろう。我々はそのような行為をいいことだとする価値観もある。それは人間全体に共通する価値観であり、利他性というものが人間の重要な本性のひとつであり、人間を人間たらしめているものである。昨今は、経営にこの利他が叫ばれている。何故ならば、これからの企業の在り方は、これまで標榜してきた「貪欲なアメリカ流の資本主義から次のステージ」へと変わってきているからである。これからは新しい価値観を持つ企業だけが、存続できる時代であろう。新しい価値観とは、金よりも会社に役立ちたいという心。利益追求よりも、その企業に社会的価値はあるのかといった点へのこだわり。そして人として、人間として大事なことを教えられる経営等。人が資産とはいえ、人は、お金と違って扱い方を間違えると不良資産となってしまう。社員を信じない経営者、ウチにはロクな社員がいない、と言っている経営者が何と多いことか。「何が正しくて何が間違えているのか」、そして「その正しいことをいかに貫き通すか」ということが、経営においてもいかに大事なことか、昨今ほど考えさせられることはない。時間を要しても、やらなければならないことを真面目にひたすらやっていくという事を、真剣に考えていく時ではないだろうか。その時に重要となるのが何といっても人財である。利益の最大化が経営といっても経営とはあくまでも人の営みのひとつにしか過ぎない。社員の意欲を高められるかどうかはまさに経営者の手腕そのものといえる。