OBT 人財マガジン
2011.06.07 : VOL117 UPDATED
-
競争優位の源泉は人、人財育成に迷走する日本企業
企業が持続的な競争優位を生み出していくためには、経営トップや特定のリーダーだけに頼るのではなく、企業で働くすべての社員にその責務があるとの認識を社内の人たちが共有することが必要である。企業変革論論議が盛んな昨今、変革の奇跡を起こせるのはとりもなおさず人である。しかし、大方の日本企業では、人は大事、人財こそ最大の経営資産等とはいってはいるものの、人財として育てるための明確な方針も戦略も持ってない。そのために、景気が悪くなると人を育てるといった分野に投資しなくなり、そして育てるという活動は、「育成部門に任せ」「教育団体に任せ」「マネジャーに任せ」等というように極めて安易で無責任な考え方が常態化している。要は、組織を上げて本気で人財として育てようとしていないのである。この背景には、ひとつは、人の成長は生得的なものにかなり影響されというパラダイムが強い。従って出来るだけ優秀といわれる大学(優秀さの定義には非常に疑問が残るが)の卒業生を採用するというパラダイムが非常に根強い。その為、学歴と企業人としての優劣に因果関係があるという暗黙の前提が色濃く存在する。然しながら、その因果関係には何らの科学的な根拠は見受けられない。本質的に、人間の能力には大した差はないのである。大体、能力云々といったって大学の4年間ですべてを決めること自体がおかしい。それから40年以上を企業人として過ごしていくにもかかわらず、何故4年間で優秀かどうかなんて決められるのか。勿論、企業人としての能力が開花するまでの時間には個人差がある。その時間の差は天性の部分と本人の体験する仕事、上司や組織の関わり方に大きく規定される。もうひとつは、いかにして売るか、いかにしてコストを下げるか等といった短期的な議論と、人財を育成するという長期的なテーマが全く同じ土俵、同じ時間軸の中で議論され語られてしまう為に、緊急度の高い短期的課題に重要度の高い長期的テーマが駆逐されてしまうのである。要するに、例えば投資すれば翌日から生産性が上がる設備投資の採算性で非常に長い時間を要する人財の投資へのパフォーマンスが比較されているという状況が真理であろう。PFドラッカーの著書マネジメントに「人こそ最大の資産」とある。当たり前と言ってしまえばそれまでであるが、人という最重要資源をどれだけ育てどれだけ活かせるのか。重要な割には、継続性の無い思いつきの人財施策をとっている今の多くの日本企業に突きつけられている大きな課題であろう。