OBT 人財マガジン
2011.05.25 : VOL116 UPDATED
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社員の活力は、独自な経営観とユニークな施策から生まれる
昨今の、日本企業に接していて、経営の根幹であるはずの社員が活性化していない、生き生きとしていないと感じることが富に多くなってきている。そう感じるのは私だけだろうか。それらの状況を輩出している要因には、・ 多くの企業で競争力の構築という名のもとにコストダウン、効率性の追求ということが推進されているが、大方は、これまで10人で担っていた仕事を7人で担わせるようにしてコストを下げるというレベルのやり方である。それは、分母を減らせば生産性が自然と上昇するという暗黙の前提であるが、結果的に業務のレベルダウンや生産性を低下させている。なぜなら、現場の疲弊感を加速させているからである。要は、生産性の捉え方が非常に稚拙なのである。・ 成果に連動した評価・給与体系を導入すれば、全体の競争力向上につながるという前提での成果主義の導入が、全体よりも自分、プロセスよりも結果へと関心が大きく振れてしまい、今や大きな反作用を生じさせ現場の一体感を喪失させている。・ 米国式の論理的で精緻な戦略を作れば社員の意欲を喚起できるという前提で、各種のフレームワーク、差別化等同じような論理で同じような戦略が巷に溢れている。然しながら、いかに緻密で立派な戦略であってもそれが現場に理解、支持、浸透しなければ推進されることは無い。推進が遅遅として進まないと、"現場はやる気がない""何もしていない"等といった評価となり、管理が一層強化されるため、現場の閉塞感や疲弊感につながっているのである。このように、様々な企業で繰り出されている経営施策は、業種・業界を超えた汎用的な施策であり、そこには、我が社の競争力の構築につながるような独自性は全くといっていいほど感じさせない。且つまた、本来の目的は、競争力の源泉として導入された施策が、逆に競争力や差別化そのものである人財の意欲ややる気を喪失させ、組織全体を停滞させる結果につながっている。多くの企業では、"人が大事、これからは人財が最大の経営資産とは、言いながらも、本当の意味で "人の意欲""人のやる気"という点にフォーカスして経営を行っている企業がどれだけあるかというと非常に疑問である。換言すれば、そこには、"人の意欲ややる気"と"我が社の業績"そして"仕事のパフォーマンス"とは、直接的な因果関係は無い"という強い暗黙の前提が存在しているのである。その証左として、どのような商品を取り扱うかという点には大変関心が深いものの、それを考え出す人の意欲や気持ちという領域となると途端に力が入らなくなってしまう。それらは、"人事の課題"或いは"特定の個人のやる気の問題"と看做しているのである。我が社なりの戦略、我が社ならではの経営施策、我が社らしい制度・仕組み等の構築、そしてそれらの全てが我が社の人財の意欲の向上や活性化につなげる、という独自な経営観、ユニークな経営スタイル等が、我が社の競争力として結実するのではないだろうか。