OBT 人財マガジン
2011.03.09 : VOL111 UPDATED
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過信、無策、無責任さが引き起こす覇者の脱落!
中国、インド、ブラジル等のいわゆる新興国は、2011年も高い成長率を持続する一方で、いわゆる先進国といわれる米国、欧州、日本は、財政・金融問題等を始めとして長い患いに入って容易に脱出は不可能な状況にある。金融緩和を続けざるを得ない米国の状況は、ドル安や新興国への資金流入を促し、逆に資源インフレという形で米国に跳ね返ってくる。そして、日本はといえば高齢化と人口減少といった重い荷物を背負ったままで身動きが出来ない状態にあるにもかかわらず、政治といえば、この国のために何をしなければならないかといった議論ではなくも政治家個人の欠点や対立政党の敵失のみにはまりこんでいる。そして、数カ月先の地方選挙や解散も議論される中で単なる人気取りの政策に終始しているのみである。大局的に見れば、日本、米国、欧州というこれまで先進国と呼ばれてきた国々が長期化する共通の病を抱え完全に劣勢に立たされている中でこれまで新興国といわれてきた国々の目覚ましい躍進を目の当たりにした時、世界経済の覇者、基軸通貨等も既にその地位が完全に交代してしまったという認識が必要なのではなかろうか。そして、先進国、新興国等といった定義も先進国側が定めたスケールであって既に現実から大きく外れてしまっている。それは、いって見れば"Goodbye、Wall Street New York" "Hello Pudong Shanghai" である。交代の背景にあるものは、紛れもなく、覇者達の過信、無策そして無責任さにある。そして、今日の日本の劣悪な状況は、既に80年代から予測出来ていたことであるにもかかわらず、何故、長期的な視点で手を打たなかったのだろうか。政治でも経営でも、個人の生活であっても人間は、自分が見たいものしか見ない、見たくないものは全く見えないのである。そして、明白な事実を無視しそれときちんと向き合わないために、状況が実態よりもいいと言うみなし方をしがちで、それが最終的にはほぼ確実に破綻につながっていく。今の政治も、我々国民の意識も、30年、50年先の人達の生活を犠牲にすることを強いているのに等しく、将来の世代に対してあまりに無策で無責任過ぎないだろうか。これは、企業経営でもマネジメントでも等しく同じことが言える。問題や課題の先送りは、単に将来にそのツケを回しているだけでそれが必ずや危機的な状況につながっていく。それは、1980年代に今日の状況がある程度予想しえたにも関わらず、課題を先送りにして何らの策も講じてこなかった過ちを再び今、繰り返そうとしているに過ぎないのではないだろうか。