OBT 人財マガジン
2010.12.08 : VOL105 UPDATED
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成長へのアクセルの加速は、同時にブレーキの踏みこみを招き成長を妨げる要因に!
100年に一度の経済・金融危機がもたらした功罪は、いろいろなものがあるであろうが、
少ない功のひとつとして多くの企業が嫌がおうでも自社の経営課題を直視せざるを得なく
なってきたことがその代表例といえるのではないだろうか。
その経営課題の多くは、従来から指摘されながらも抜本的な解決に取り組まずに放置されて
きたものである。
これまでの企業経営の多くは、自社の成長を促すものであれば何でも導入して積極的に
その成長を加速させようと試みられた。
このやり方は、経済が成長を辿っている間は、とりあえず不具合は全体の成長という流れの中で黙止され、不具合を露呈することなく何とか超えてきたのである。
然しながら、構造的な市場縮小という時代になると様々なところでほころびが生じはじめ、その成長にも陰りが出始める。
にも関わらず、成長がある種の限界に達していることを認識出来ないためこれまでより強く
アクセルを踏み込む。
要は、成長に陰りが生じる、成長が止まると成長に向けてのアクセルを一層踏み込むのである。
然しながら、これは、既存の能力で成長に対処しようとしているためアクセルを踏みながら同時にブレーキを踏んでいるのと同じような結果をもたらすのである。
組織構造であったり、経営管理の方法であったり、組織風土であったりと成長を妨げる要因がブレーキとなって生じるため、意図したことと異なった結果が生じてしまうのである。
この矛盾した動きが全体を崩壊させる要因となっていく。経営者は、何かがおかしいとは気づくものの、本質的な要因ではなく表面化した症状ばかりを
是正しようと試みる。
現場の意欲の無さや怠慢、スキルの低下、そして方針の不履行等と解釈し、現場への圧力を強めるために事態をさらに悪化させる。
そして経営から現場に要求する仕事の種類が増え過剰な負荷と多業務の負荷の両者から活動の焦点を絞ることが出来なくなり、その調整もつかなくなってしまう。
そして、現場にはあきらめと疲弊感が広がり、停滞に一層拍車がかかるのである。世界の産業と市場の構造変化を見誤り、必要な改革を先送りしてきたツケは大きい。