OBT 人財マガジン
2010.11.10 : VOL103 UPDATED
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経営や戦略に法則はあるのだろうか?
経営でも仕事でも、或いは個人の生き方でも大別すると2通りのタイプがある。① 愚直に自分達の考え方で一旦決めた道や方法を徹底して突き詰めていくタイプ② 常に新しいもの、他社のやり方等を導入するものの、結果が容易に見えないと長続
きせずすぐ飽きてしまい、また他のものを導入するタイプ短期的に見れば、②の方が得をすることも多いが、長期的視点で見ると①の方が得をすることは間違いない。②の場合いろいろなことをやってきてはいるが、何時まで経っても強い優位性を獲得出来ないことが多い。米国のITTのCEOとして華々しい成果を上げたハロルド・ジェニーン氏が巷に溢れている経営理論のうさんくささをこう非難している。『多くの企業人が何の性懲りもなく錯覚の魔術を見て何かの妙薬、誇大なうたい文句と共に売り出される特効薬を求めてやまないのである。』何故、こうした妙薬を求めるのか。それは、複雑な問題を解き明かしてくれる公式を求めているからである。きれいな形でまとめられて魅力的なラベルが貼られているものの現実的には、何の有効性を持たない。ハロルド・ジェニーン氏の指摘には、非常に共感する点が多い。流行りのファッションのように新しい経営理論や、ビジネスの理論は現れては消え、消えては現れる。・ こうすれば差別化が出来る・ このようにすればブランド力は向上する等といった法則やフレーム類の主張である。そして、それに関する書籍類やセミナー等も多数登場する。法則というのは、どのような状況でも成立する、どのような場合でも再現可能な一般性の高い因果関係を意味する。自然科学の世界であれば、「Aを使うと甲が可能になる」という法則が勿論成立する。然しながら、この種の法則は、経営や事業では全く有効性を持たないのである。それが有効性を持つのであれば、その法則やフレームを駆使すれば、世界中の企業がGEに、トヨタになれるのではないだろうか。異なった文化を持つ日本企業と米国企業では様々な文脈が異なるのである。日本でうまくいくことが米国ではうまくいかないし、米国企業でうまくいった方策が日本企業では、うまくいかないのである。それは、日本企業同士でも同じでそれぞれの文脈が異なるから右から左にというような単純な図式ではいかないのである。セオリー等では経営は出来ないということを肝に銘じ、耳に心地よく響く自明の主張、例えば、"差別化の武器としてブランド力が大事""組織間の壁を超えるためにはマトリックス組織体制の構築が急務"また"これからは企業のミッションを構築してミッションマネジメントで"等等、自明の主張や法則がわかったから、或いはフレームを理解したから経営や組織マネジメントの実効が上がるわけでは決してない。経営に法則や処方箋、或いは特効薬は無いということである。自らの考え方で自らの進むべき道の答えを出すしかない。耳障りのいいフレーズに煩わされないことである。自明の理が惑わされないことが考えるということである。