OBT 人財マガジン

2010.09.22 : VOL100 UPDATED

経営人語

  • 経営リーダーは経済危機の効用を活かしているのだろうか?

    この7月に軽井沢で行われた経営トップセミナーに参加した経営トップに、「現在、最も
    重視している経営課題は何か」という問いに「人材教育の強化」が1位としてあげられ
    ていた。この課題は、経年で見ても3年連続のトップテーマと認識されている。

    その一方で、人財教育は重視しているものの、現状は、人財不足という答えも非常に
    多い。

    これからの競争力は、人財である。従って教育が重要という認識は強いものの、社内を
    見るとこれからのグローバル競争に対応出来る人財がいない、育ってないということで
    あろう。

    然しながら、一体、経営リーダーは育っているのだろうか?日本のトップマネジメントの
    リーダーシップを見た場合、概ね、業務遂行能力は高いものの相対的に戦略構築能力
    は極めて低いと思われる。

    本来であれば、経営リーダーとして自社の10年後の姿をしっかり考え、その10年後の
    姿に向けて事業を推進していく識見と能力が問われるべきであるが、圧倒的に多いパ
    ターンは、未来に向けて戦略を語る、戦略を示すのではなく、ただただ執行をしている
    のみで、そのために企業としてのパフォーマンスは落ちて行くばかりである。

    部下に対して組織のパフォーマンス向上を強く強いている反面で、経営リーダーとして
    新しい時代に向けての経営能力の有無については論じない。部下の能力や意欲の無
    さを詰めるばかりの経営リーダーが殊のほか多い。

    日本企業も昨今は戦略で競争してくという場面が非常に多くなってきているのにもかか
    わらず、アナログのカラを被った、アナログの実をつけたような経営リーダ-では、もは
    や将来の経営に役立つ新しい構想を打ち出す能力等は望むべくもない。

    いずれにしても、時代はすごいスピードで着実に変化している。我々は一体それに適応
    出来ているのだろうか?20世紀からの管理手法から抜け出せているのだろうか?これ
    からの競争は、変化との競争であり、それに向けて新たな価値を創造する必要がある。

    先の見通せない競争の中で,企業も人も変わらなければならないし、生き抜いていかな
    ければならない。

    そのために、経営リーダーは、自分の企業が「何のために社会に存在しているのか」、
    そして、それを率いるリーダーとしての「自分の役割は何か」といった根源的な問いかけ
    を絶えず、自らにする必要があるのではないだろうか。

    経済危機の効用として企業の改革が起きるのには大きくわけて2つの方向がある。

    ①新しい事業構造への挑戦
    多少、難易度が高くても、危機という局面だから、新しい事業、新しい市場、事業全体
    の再編成へと踏み出す決断を組織が行える。

    ②経営陣の大幅刷新
    新しい時代に自社をリードすることが出来ない旧来型リーダーの刷新。

    景気循環が経済にはつきもので、その循環の中で不景気が過去の甘さを考え直す機
    会を我々にもたらし、新しい方向へと踏み出すための背中を押してくれるからである。

    本来、危機は変革に向けて踏み出せるという効用があるにもかかわらず、我々はその
    効用を本当に生かしているのだろうか。

    再考すべき時間はわずかしかなく、最終コーナーに入ったといえる。