OBT 人財マガジン

2010.06.09 : VOL93 UPDATED

経営人語

  • 長期的に業績がよく競争力がある企業の経営とは!(後編)

    前号(5月26日,VOL92)では、長期にわたって業績がよく持続的な競争力を
    有する企業の特徴として、「他社の気づかない領域への着眼している点」と
    「戦略実現に向けて独自のプロセスを構築している点」の2つについ説明したが、
    今回は、残りの3つ「企業風土」「組織の学習能力」そして
    「革新を追求する経営」について言及したい。


    3.小さなことを徹底して行う企業風土

    たいしたことはないということから組織は崩壊していく。
    小さなことを見逃す気持ちそのものが、大きな問題を発生させる引き金となってしまう。
    たいしたことは無いという気持ちが事業そのものの存続を左右するまでに至ってしまう
    ことは非常に多い。
    そういう風潮が組織の中に出来上がると、大きな問題であっても小さなとるに足らない
    問題と見てしまい、結果的に取り返しのつかない問題に発展してしまう。
    要は、感覚の鈍化である。
    そうならないためには、組織の中に小さなことを徹底する風土を作り上げることが
    大事なのである。


    4.組織の学習能力を高める

    新しい製品アイデア、新しい販売のアイデア、新しい技術のアイデア等が次々に
    生まれてくる組織は結果として非常に業績がよくなる可能性は高くなる。

    一方で、何も考えない、決められたことだけ、また顧客から要求されたことだけに
    対応しているような組織では、
    事業の新しい価値創造のチャンス等、期待出来ない。

    新しい価値創造で、もうひとつ重要なことは、決められたことをやることだけでなく、
    自らトライしてみる自由度を組織が許容することである。

    可能性があるのなら、やってみて失敗してもそこから学ぶことは非常に多い。
    やらないでチャンスを見逃すくらいならやって見て失敗した方が学習が出来て
    次へのノウハウを蓄積できる。

    上位者や外部ばかり頼っていると、
    自分達で考えない組織や経営となってしまい非常に危険である。

    特に中堅、中小企業や経営者の影響力が非常に強い企業では経営者が
    懸命になればなるほど社員は言われたとおりにすればいいという依存体質を
    生み出してしまっている。
    そのような企業の経営者に限って、「ウチの社員は、危機感が無い、主体性が無い」と
    嘆いき人事に「もっと主体性のある人財を採用しろ」と指示し、
    採用会社の思うツボにはまるのである。


    5.革新につぐ革新を追及する経営

    長期的に業績がよく競争力がある企業では、決定したことを振り返り、
    本当にそれでいいのかということを組織内できちんと問い続けている。
     
    例えば、「新商品が何故、思うように売れなかったのか」
    「何故、利益率が下降しているのか」「採用した人財が何故育たないのか」等等を
    きちんとレビューし、検証して組織としての蓄積にしているかどうかということである。

    駄目な企業に限って「商品開発部門がダメ」「景気が悪い」或いは
    「人事がいい人財を採用しない」というところにその理由を帰結させ、レビューや検証を
    全くしていないのである。

    計画や目標設定というのは、その会社の風土や規範が背景となっている場合が多い。
    その計画や、目標の基盤や背景にあるものを振り返るというのが強い組織になる
    ために欠かせない学習である。

    業務レベルやオペレーションレベルの話ではなく、何故、そのような経営をして
    いたのか、どうしてこのような戦略を立てたのか、その目標を立てて我々は一体
    何を実現しようとていたのか等等、組織内できちんと振り返ることから組織の競争力が
    培われていくではないだろうか。

    組織の統廃合やフラット化等を繰り返し名称だけいくら変えても、組織は決して
    強くはならない。
    目標と実績を対比して未達成の理由を捜し出しても従来の延長線上でオペレーションを
    繰り返している限り何らの革新にはつながらないのである。

    革新のためには、我が社の考え方やその背景にあるものそのものを振り返り、
    きちんと検証していくことが大事である。