OBT 人財マガジン

2010.05.26 : VOL92 UPDATED

経営人語

  • 長期的に業績がよく競争力がある企業の経営とは!(前編)

    出口の見えない日本経済の停滞により、企業も個人も活力を喪失し成長の旗印を

    失いつつある昨今ではあるが、全ての企業が停滞しているわけでは決してない。

     

    10数年間にわたっていろいろな企業を見てきて、時代を超えて長い時間生き残って

    きた長寿企業や優れた企業には業界・業種を超えてどこか似通ったところがあり、
    逆に駄目な企業も業界・業種を超えて共通するものがある。

     

    長期に、業績がよく、競争力のある企業には

     

    1.他社の気づかない領域に着眼している

     

    経営には、2つの側面がある。
    ひとつは「戦略」、もうひとつは「業務」即ち、営業、開発、技術、生産等のいわゆる

    オペレーションといわれるもの。
    経営を業務というレベルで捉えると、会社で行われている全ての業務をうまくおこなわ

    なければならないという発想になってしまう。
    しかし、「戦略」というのは、あるべき姿を実現するために一番効果がある道筋を考える

    ことだから、全てをうまくやろうという発想にはならない。
    他社では出来ない、我々ならではの力を十分発揮出来る領域を見極めることが重要
    になる。
    『業務』を中心に発想している会社は、いつもあれもこれもという行動になってくる。
    どこに重点を置くかという発想に乏しく、経営手法のてんこ盛り状態となってしまっている。
    戦略的な発想がないまま、外部のやり方をそのまま導入するからやたらにたくさんの

    方法が存在し、その効果は期待できないばかりか、社員も嫌気がさしてしまっている。

     

    そして、このように業務を中心に展開している企業に限って「現状のことをうまく出来て

    いないのに戦略的なことなど出来ない。それよりも今やらなければならないことをやる

    必要がある」と必ず口にする。

     

    駄目な会社は、業界の常識の中で、業務を工夫して、いかに効率よくやるかという

    ことに努力する。
    然しながら、その努力が顧客から見た場合必ずしも十分な価値とはなっていないという

    ことに気づかない。

     

    優れている企業は、この業界の常識となっているものそのものがスタンダードとは

    考えていない。

     

    業界が提供できていない価値を提供していくということを考えそこに努力している。


    2.独自のプロセスの構築

     

    「どういう会社でありたいか」というビジョンを定め、それを実現する戦略を策定し、

    独自の力を生かせる領域を定めても、それをどう実現していくかを示さなければ単なる

    絵に描いた餅にしか過ぎない。

     

    どの企業や組織にも3つの基本となるプロセスが存在する。

     

    第一 「企画プロセス」
    新しい商品やサービスを生み出すための一連の活動の連鎖。
    ここを特徴とする会社は、市場に存在しないような商品やサービスの開発をとことん

    追及、このプロセスでは、際立った強さを持っている。

     

    第二「業務プロセス」
    生産、営業、納入という業務を運用する能力一連の活動の連鎖。
    ここを特徴とする会社は、製品や商品の機能は並であっても、受注し、生産し、納品

    するまでのプロセスでのスピード、コスト面において他社がマネできない独自の方法

    を確立している。

     

    第三「顧客関係プロセス」
    顧客一社一社との長期的な関係を高め、継続的な取引可能にする一連の活動連鎖

    である。
    個々を特徴とする会社は、顧客一社一社から信頼される状況作りに注力する。
    個別の要求や期待にきめ細かく対応し絶対の信頼を得られるように働きかける。

     


    同じ業種であってもどこに自社の価値を構築するかは企業によって異なる。
    重要な点は自社のビジネスの成長に欠かせない最重要プロセスに焦点を当て、そこに

    経営資源を集中して投入することである。

     

    この3つのどこかで他社とは異なる「際立って高い価値を提供」する必要がある。


    On the Business Training 協会  及川 昭

     

    次号は『企業風土』、『組織の学習能力』、『革新を追求する経営』について述べさせていただくことにします。