OBT 人財マガジン
2010.02.24 : VOL86 UPDATED
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非連続の変化が促す未来の設計図の必要性!
百貨店の衰退に象徴されるがごとく、今、流通業界で激烈な変動が起こっている。
然しながら、これは、流通業界だけでなく、多くの業態で今、顧客から、市場からその「存在の必然性或いは存在の意義」を問われ始めているのである。
「存在の必然性」或いは「存在の意義」というのは、その業態がないと顧客が本当に困るのかということである。
存在意義が喪失した業態から、衰退していくのは当然のことではあるが、それなりに
優秀といわれている人達がいるにもかかわらず、何故その予兆を前もって理解し、
対応出来ないのだろうか。
これは、危機が叫ばれてもその危機が表面化するまでの時間はことのほか長い
のである。
業績が一気に激減するということはなく、比較的微減という状況が長きにわたって続くため組織に本当の危機感が生じにくいのである。
そのために、景気の悪化、天候不順、デフレ、原油高騰等といった点に業績不振の理由を見つけ微減の理由を探すのである。
業績不振は一時的なものであって、自分たちの努力の範囲を超えた止むえないもの
であるという考え方が紛れもなくその根底にあるのである。
そして、始末が悪いことに潜伏期間の間に業績が多少持ち直すということもよくあることでこれが落とし穴となってしまう。
そして構造的な変化を見落とし、潮目が大きく変わって一気に急降下してしまうというのが常態である。
人間は誰でも非常に陥りやすいひとつの過ちを持っている。
うわべの見える範囲、聞こえる範囲、或いは自らの過去の体験に基づいた価値判断の基準のみで判断し、それでやっていけると思ってしまう。
自分達はそれで正しいと思っているが。客観的には間違えているということが非常に多いのである。
組織もまた然りで、組織は成功したと感じた途端に変革を阻む思考や行動に陥る。
これがまさに内なる敵で成功者が必ず陥る落とし穴である。
成功した組織は独りよがりになりやすく、成功したものを守ろうと保守的になってしまう。
これはある意味で当然のことだし、短期的には有利に働くことが多いが、長期的に見ると成功に導いてきた要因が失敗の原因となる。
そして、我々が、「それが間違いだった」と気づくのは、結果が悪い状況に遭遇して
始めてそれに気づくのである。
悪くなって始めて「自分たちが間違っていた」ということに気づくのである。日本航空の経営破綻も同様である。
米国、欧州ではすでにマーケットの半分を占めるまでに台頭してきたローコストキャリアの存在、行政に保護されて高い航空運賃時代の企業体質を引きずったまま
では競走出来るわけはない、やがて潮目が大きく変わって「存在の必然性」を
問われるという自明の理を理解出来ない不可思議さは、航空業界や流通業界の
特殊例だろうか。
競争環境の激変は産業を問わず、間違いなく時代の潮流である。
台頭する新興諸国のローコスト企業と低コスト市場、我々を待ち構えているのは、微減の世界ではなくやがて生じる急降下に至る構造的変化であり、そして新旧の
交代であろう。
このような、非連続の時代に至っても、未だ、過去の延長線上で将来の戦略を考え
ていないだろうか?
出来るだけコストを下げていい製品を作ってコツコツ売るといったスタイルはもうとっくに限界にきている。
20年前に今の中国の大躍進と日本の凋落を予想出来た人は誰もいないように
世の中は全く先が見えない。
先は見通せない一方で、時間は我々を待ってくれない。間違いなく時間だけは刻々と
進んでいく。
人も企業も否応なしに自分の進むべき方向を右か左に決めざるを得ない。
未来の設計図が必要なのである。
その際の羅針盤は、自分の軸であり、最後は自分の考え方だけである。
今こそ人も組織もその賢さが勝負のポイントとなろう。