OBT 人財マガジン
2009.12.09 : VOL81 UPDATED
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長期的に業績がよく競争力がある企業の経営に共通する点!
出口の見えない日本経済の停滞により、企業も個人も活力を喪失し成長の旗印を
失いつつある昨今ではあるが、全ての企業が停滞しているわけでは決してない。
10数年間にわたっていろいろな企業を見てきて、
優れた企業は業界・業種を超えてどこか似通ったところがあり、
逆に駄目な企業も業界・業種を超えてどこかその趣が非常に似通っている。
競争力のある企業には、以下の様な特徴がみられる。
1.他社の気づかない領域に着眼している
経営には、2つの側面がある。ひとつは「戦略」、もうひとつは「業務」即ち、
営業、開発、技術、生産等のいわゆるオペレーションといわれるもの。
経営を業務というレベルで捉えると、会社で行われている全ての業務を
うまくおこなわなければならないという発想になってしまう。
しかし、「戦略」というのは、あるべき姿を実現するために一番効果がある道筋を
考えることだから、全てをうまくやろうという発想にはならない。
他社では出来ない、我々ならではの力を十分発揮出来る領域を見極めることが重要になる。『業務』を中心に発想している会社は、いつもあれもこれもと言う行動になってくる。
どこに重点を置くかという発想に乏しく、経営手法のてんこ盛り状態となってしまっている。
戦略的な発想がないまま、外部のやり方をそのまま導入するから、やたらにたくさんの方法が存在し、その効果は期待できないばかりか、社員も嫌気がさしてしまっている。
そして、このように業務を中心に展開している企業に限って、
「現状のことをうまく出来ていないのに戦略的なことなど出来ない。
それよりも今やらなければならないことをやる必要がある」と必ず口にする。
駄目な会社は、業界の常識の中で、業務を工夫して、いかに効率よくやるか
ということに努力する。然しながら、その努力が顧客から見た場合、
必ずしも十分な価値とはなっていないということに気づかない。
優れている企業は、この業界の常識となっているものそのものがスタンダードとは考えていない。
業界が提供できていない価値を提供していくということを考え、そこに努力している。
2.独自プロセスを構築する「どういう会社」でありたいかというビジョンを定め、
それを実現する戦略を策定し、独自の力を生かせる領域を定めても、
それをどう実現していくかを示さなければ単なる絵に描いた餅にしか過ぎない。
どの企業や組織でも3つの基本となるプロセスが存在する。・第一「企画プロセス」
新しい商品やサービスを生み出すための一連の活動の連鎖。
ここを特徴とする会社は、市場に存在しないような商品やサービスの開発をとことん追及、このプロセスでは、際立った強さを持っている。
・第二「業務プロセス」
生産、営業、納入という業務を運用する能力一連の活動の連鎖。
ここを特徴とする会社は、製品や商品の機能は並であっても、受注し、生産し、納品するまでのプロセスでのスピード、コスト面において
他社がマネできない独自の方法を確立している。
・第三「顧客関係プロセス」
顧客一社一社との長期的な関係を高め、継続的な取引可能にする一連の活動連鎖である。
ここを特徴とする会社は、顧客一社一社から信頼される状況作りに注力する。
個別の要求や期待にきめ細かく対応し絶対の信頼を得られるように働きかける。同じ業種であってもどこに自社の価値を構築するかは異なる。重要な点は
自社のビジネスの成長に欠かせない最重要プロセス、つまりコアプロセスに焦点を当て、
そこに経営資源を集中して投入することである。
この3つのどこかで、他社とは異なる「際立って高い価値を提供」する必要がある。
3.小さなことを徹底して行う企業風土たいしたことはないということから組織は崩壊していく。小さなことを見逃す気持ちそのものが、
大きな問題を発生させる引き金となってしまう。たいしたことは無いという気持ちが
事業そのものの存続を左右するまでに至ってしまうことは非常に多い。
そういう風潮が組織に中に出来上がると、大きな問題であっても小さなとるに足らない
問題と見てしまい、結果的に取り返しのつかない問題に発展してしまう。
要は、感覚の鈍化である。
そうならないためには、組織の中に小さなことを徹底する風土を作り上げることが大事なのである。
4.組織の学習能力を高める新しい製品アイデア、新しい販売のアイデア、新しい技術のアイデア等が
次々に生まれてくる組織は結果として非常に業績がよくなる可能性は高くなる。
一方、何も考えない、決められたことだけを、顧客から要求されたことだけに
対応しているような組織では、事業の新しい価値創造のチャンス等期待出来ない。
新しい価値創造でもうひとつ重要なことは、決められたことをやることだけでなく、
自らトライしてみる自由度を組織が許容することである。可能性があるのなら、やってみて失敗してもそこから学ぶことは非常に多い。
やらないでチャンスを見逃すくらいならやってみて失敗した方が学習が出来て、次へのノウハウを蓄積できる。
上位者や外部ばかり頼っていると、自分で考えない経営となり、かなり危険である。
特に中堅、中小企業や経営者の影響力が非常に強い企業では、
経営者が懸命になればなるほど社員は言われたとおりにすればいい、
という依存体質を生み出してしまっている。
5.革新につぐ革新を追及する経営長期的に業績がよく競争力がある企業では、決定したことを振り返り、
本当にそれでいいのかということを組織内で問い続けている。
例えば、目標を設定して、実績と比較して、何故、達成出来なかったか、という振り返り方は、PDCAサイクルのDの結果を振り返っているのである。
これは、シングルループ学習といわれるものである。一方、計画や目標設定というのは、その会社の風土や規範が背景となっている場合が多い。
その計画や、目標の基盤や背景にあるものを振り返るというのがダブルループ学習といわれるもののである。
革新のためには、我が社の考え方や背景にあるものそのものを振り返ることが大事である。
業務レベルやオペレーションレベルの話ではなく、何故、そのような経営をしていたのか、どうしてこのような計画を立てたのか、
その目標を立てて我々は一体何を実現しようとしていたのか等々、
組織内できちんと振り返ることから組織の競争力が培われていくのではないだろうか。
単に、目標と実績を対比して未達成の理由を捜し出しても
従来の延長線上でオペレーションを繰り返しているだけで何らの革新にはつながらない。