OBT 人財マガジン

2009.11.11 : VOL79 UPDATED

経営人語

  • - 失敗は悪いことか?- 想定される失敗への備え方で未来が決まる!

    時代のスピードについていくために企業も人も努力する。
    そのスピードについていくペースがその企業の力であり、その人の能力といえよう。

     

    時代が変わっているのに、それに合わせて自らを本気になって変えようとしないのは

    意識的にせよ、無意識にせよ、時代は変化せずこのまま推移するという暗黙の前提の存在

    或いは失敗を避けようとする心理の存在のいずれかがその原因になっているように思われる。

     

    変えるということを嫌ってそのチャレンジ自体をやめてしまう人が今は圧倒的多数であることは間違いない。
    そして「変われなくてもしようがない」というところで片付けてしまっている。
    このように安易な方向に流れるから、妥協に向かって進んでいくから結局何も得られず終わってしまうのである。

     

    「変われなくてもしょうがない」というところでチャレンジを放棄するそのことそのものが間違えているのである。


    そもそも「出来るなら避けたい」と誰もが考える変わっていくということの難しさが

    本来はそれをバネにして新しい知識を受け入れようとする素地を作っていくのである。

     

    そもそも我々が生きていく上で本当に必要な知識は、表面的なものではない、より実践的な知識なのである。

    表面的な知識とは、暗記中心の学校教育で教わるようなものであって

    実践的な知識は、自分自身の体験や周りの人たちの失敗に学んだ生きた知識を指すのである。


    実践的な知識が大事になるのは、実際に社会の中で起こる現象のほとんどが学校で教わる

    模範的な知識のように動くことがないからである。

     

    現在は近道がたくさんある。
    いろいろなものの方法論や習熟の仕方が確立されはじめている。
    他人が研究してくれた最短ルートを通ってある段階まではいける。
    然しながら、それはあくまでも知識であって、知識というものは、自分の力ではない。


    頭で覚えた情報は、他の人の実績というのは、自分でやってみて経験してみなければ

    本当の力には決してならないのである。


    変わるというのは、成長するということである。

    知識と知恵の差というのは本当に大きい。

     

    その距離を縮めていけるかどうかが成長の分かれ目である。

    例えば、一流の人とそうでない人たちとの差は、「スピード感」と「咄嗟の判断」といえる。

    この「スピード感」や「咄嗟の判断」は、パターン化された画一的なフレームワークや

    トレーニングでは培えないのである。


    このパターン化された画一的なフレームワークやトレーニングは、人間の最も重要な才能である

    感性に従った瞬時の判断能力等を奪っていくのである。

     

    この感性に従った瞬時の判断能力は、自分が身銭を切って体験する。

    例えば、読書でも自分が身銭を切って購入したものでなければ自分の知識はつかない。

    また、食事でも身銭で美味しいもの食べない限り本当の味覚は身につかないのである。

     

    凡人は、身銭を払って体験するということがシビアさにつながり、咄嗟の判断力を確実に向上させていく。

    私たちが変わる第一歩は、まずは、現状に妥協せず自ら行動することから始まる。


    自己啓発の権威ジョセフマーフィーも「成功できない人の共通点は、頭の中で考えているだけで

    実際の行動を起こさない人」と言っている。


    仮に失敗したとしてもその失敗は決して悪いものではなく、いわばその人が進歩するために

    避けては通れないひとつのプロセスのようなものである。

     

    失敗には、いい失敗と悪い失敗がある。

    我々が経験すべきは、個人が成長する過程で必ず通らなければならない、体験しておいた方が

    後々のためになるという失敗をいい失敗といっている。

     

    一方、悪い失敗とは、いわゆる不注意や誤判断等の単純ミスが原因で何度も繰り返される

    失敗である。

    悪い失敗というのは、無意味に被害を大きくして自分や周りに多大な迷惑をかけるのが常である。

    そのようなことを繰り返しているうちに、いたずらに失敗を積み重ねる悪癖を身につけることにもなりかねない。

     

    労働災害の世界には、災害発生の確率を経験則から導き出した「ハインリッヒの法則」というのがある。

    これは一件の重大な災害の裏には29件のかすり傷程度の軽い災害があり、さらにその裏には

    怪我までは至らないが300件のヒヤリとさせられる体験が存在しているという

    潜在的な問題にまで目を向けて災害顕在化の確率を数字で表した考え方である。

     

    「ハインリッヒの法則」は、失敗が顕在化する確率そのものとして考えられるが

    失敗がある一定の法則で起こる確率現象で表面的には成功しているように見えるときでも

    その裏では着々と失敗の準備が

    進んでいるという恐ろしい現実があることを伝えているのである。

     

    人も組織も活動している限りは失敗の確率がゼロになることはない。
    何か行動しようとすれば、そこに必ず失敗が起こる可能性がある。
    従って、確実に起こりうる失敗に対する備えを事前に準備しておく。
    具体的には、自分達の作った常識に対して仮想演習を行い、備えをしておくことが最善の策となろう。

     

    想定される失敗に予め備えるかどうかは、その人或いはその企業の未来を決める上で極めて重要なことである。

    然しながら、多くの組織も人もこの想定される失敗への備えがほとんどなされていないのである。