OBT 人財マガジン
2009.09.09 : VOL75 UPDATED
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常識の逆転、将来は予測できない!
8月30日投票が行われた第45回衆議院議員選挙、
結果は、民主党の大躍進自民党の大敗となった。
考えてみると、現在の日本の政治情勢を正確に予測できた政治評論家がどれだけいただろうか?
インフルエンザの世界的流行を医療の専門家は予測しえたのか?
世界経済危機を予測した金融専門家はいたのか?将来は本当に予測できるものなのであろうか?
過去、現在、将来という時間軸の中で過去にあったことが現在あるわけでもないだろうし
現在ある全てのものが将来という時間の中に存在するわけでも決してない。
現在というのは、過去が変化して出来上がったものであり、将来も現在が形を変えて
出来あがるものであろう。
勿論、大方のビジネスマンは、将来は過去や現在の延長線上にはないということを
頭では理解しているにもかかわらず、過去の事例やデータを調べて、
分析してそれに基づいて将来を考えるのである。
それは、我々の中に「過去の情報や事実の中に将来を映し出すに足りる材料があるはずである」
というパラダイムがあるからであろう。
確かに、データや数値は過去を正確に映し出す鏡であることは間違いない。
然しながら、これで将来は全く予測しえない。
過去のデータや数値通り将来が到来するわけでは決してないからである。
過去の事実、情報、データ或いは経験等にこだわって一生懸命分析してもつまるところ将来は誰にもわからない。
過去に成功してきたケースが将来にわたって成功するとは限らない。
何故ならば、時間とともに、企業を取り巻く、経営を取り巻く状況が刻々と変化しているからである。特に昨今、従来の常識とはかけ離れた現象があちらこちらで生じている。
例えば、官と民、内と外、市場と国家或いは先進国と新興国等といった過去からの区分けは今ほとんどその意味を持たなくなってきている。
どんなにこの経済危機の傷が深かろうと、この経済危機はやがて回復する。
然しながら、回復した後の状況はどうであろうか。全く過去の物差しが役に立たなくなるどころか、むしろ邪魔になる現在、全ての政策、
全ての産業が将来に向けていろいろなものを作りなおす機会であろう。
民主党の大躍進を評して多くの識者や評論家の「政治経験が無い議員ばかりで
本当に政治がうまくいくのか心配である」 という声が多いが、
「実際のところどのような経験が必要だというのであろうか」と非常に疑問である。
政治を行う、政策を打ち出す基準となるのは、紛れもなく「それが国民のためになるのか」
「それが日本国のためになるのか」ということに照らして妥当な判断が出来る方が
つまらない政治経験よりもよっぽど重要なはずである。
識者や評論家といわれる人たちの何とレベルの低い発想や価値観なのか
極めて嘆かわしい現実である。
GEを再生したジャック・ウエルチ氏がその就任スピーチで述べたといわれる
「変革を拒む組織は必ず衰退していく」 は極めて当を得た言葉である。これは、組織のみならず人も全く同様で「変革を嫌う人間は必ず衰退し、
変化しつつある組織の中でブレーキとなっていく」ともいえる。
歴史の針を元に戻すのはではなく、新しいゲームの戦い方を構想することが問われる時代である。
企業も然りで、新しい形の企業を創る絶好の機会といえるのではないだろうか。
この新しい現実、新しい世界と企業も人もどのように向き合うかが問われる時代が到来したといえる。