OBT 人財マガジン

2009.07.22 : VOL72 UPDATED

経営人語

  • 成長と膨張の違い、膨張への執着の落とし穴を認識すべし!

     

    帝国データバンクが2009年上半期(1月~6月期)の全国企業倒産集計を発表した。

    それによると倒産件数は7023件、負債総額は4兆5941億6000万円とのことであった。
    倒産件数は前年同期を16.6%上回り、2006年上半期以降7半期連続で増加、負債総額も前年同期を52.2%上回ったとのこと。

     

    これは、勿論、世界的経済危機がその要因であることは論を俟たないが

    本稿では、これを少し異なった視点から捉えてみたい。

    この不況下で、倒産や破綻等といった経営危機を迎える企業もあれば、堅調な経営を展開している企業もある。
    全く同じ事業環境に遭遇しているにもかかわらず、この違いはどこから来るのだろうか?

     

    企業が大きくなるパターンは、大別すると2つある。

     

    ひとつは成長というパターンで、もうひとつは膨張というパターンである。

    顧客ニーズやシーズを先取りしてビジネスモデルの変革や企業体質の革新に取り組みながら

    ビジネスの質や経営の質の向上を伴いながら大きくなっていく。 これを成長という。

     

    反対に、膨張とは、売上という数字の拡大に執着し、取扱商品やサービスを増やしながら

    同時に社員の数、展開エリアも拡大させていく。
    然しながら、仕事のやり方、仕事の質的側面が本質的に変わっていないため

    人や規模が拡大すると逆に生産性が悪化、収益が低迷していくというパターンである。
    膨張による拡大は、市場の需要のみに依存しているために、需要が縮小すると

    経営が一気に悪化してしまい、悪循環に陥ってしまう。

     

    将来の環境変化を見据えて、自社をどのようなポジションに位置づける必要があるのか、、

    そのためにどのようなビジネスモデルを構築するべきか等といった視点がほとんどないために

    結果的に市場や顧客の浮沈に大きく左右されてしまうこととなる。

    このパターンの場合、企業経営をしているのではなく、単にオペレーションをしているに過ぎないのである。

     

    多くの企業が、創業以来、成長を目指した経営を行ってはいるものの

    実際には、業績が伸び悩んでいる企業、一時的には伸びるものの息切れしてしまっている企業、右肩下がりの企業等、成長出来ていない企業はことの他多い。

    これらの企業は、「企業が成長していくために必要なことは何か」ということが理解できていない。

     

    仕事の革新なくして、単に顧客獲得に奔走しながら、人、モノ、カネの投入等規模拡大に向けた打ち手を一貫して講じており、まさに膨張以外の何物でもない。

     

    例えば、GMを始めとする米国のビック3は何故衰退していったのであろうか。

     

    売上や利益のレベルを指摘する話は多いものの、どのような製品をどのように作るか等といった話が

    経営陣の中でどれだけなされていたのだろうか。

    指標をもとにした分析チックな話は多いものの、現場感覚がなく一体、どこの企業の経営をしているのか

    甚だ疑問が残る。

    このような企業では、現場で従業員と同じ空気を吸い、同じように悩み嘆くといったスタイルが全くないのである。

     

    収益性や効率性ではなく、真の強さとは、心から自社を愛する、自社商品を愛するというところからしか生まれない。