OBT 人財マガジン
2009.07.08 : VOL71 UPDATED
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盛衰の分岐点はリスクから獲得しえた知覚的知識!
「金融危機に端を発した消費者心理の冷え込み」を業績不振の理由に挙げている百貨店や総合スーパーの経営者は多いが、果たしてそれが本質であろうか。
勿論、そうした影響はあるであろうが、それが彼らが苦境にあえぐ背景にあるものがどうか非常に疑問が残る。一方でこのような状況の中でもファーストリティリング、ニトリ、良品計画といった企業群は
マーケットの支持を得て業績が非常に堅調である。
この理由として、この3社がSPA(製造小売り)業態であるからと結論づけられているが
この結論も極めて短絡的過ぎるように思えるがいかがなものだろうか。
ひとつには、これまでの日本企業で多く見受けられたパターンは、単に取扱商品や製品の多様化、多品種化であり
他社よりもいかに多くの商品を市場に投入するかといったことが優劣を決する。
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そのために問屋を組織化し、多くの小売業に販路を拡大、リベートや派遣店員等の販売促進策を
より多く活用した企業が市場シェアを拡大していくといったパラダイムである。
これは、サプライチェーン全体の機能を分化させ、参加企業が分化した機能の一端を担うことにより
それぞれのリスクがヘッジ出来、生産性もよかったのである。
ファーストリティリング、ニトリ、良品計画の戦略を「リスクを賭けた縦の総合化」だとすれば
百貨店や総合スーパーのそれは「自社にとって生産性の高い横の総合化」といえる。
未だにこの横の総合化にこだわった戦い方をしている企業はことのほか多い。横の総合化の場合、サプライチェーンの中の特定機能を自社が担い
他の機能は第三者に委ねるという形になるために、得ているものも多いが逆に失っているものも多いのである。
例えば、メーカーであれば、在庫リスクや販売コスト等の負担からは免れるものの
その一方で「顧客のシーズやニーズ」或いは「マーケットの微妙な変化」等を把握できない。
単に、問屋の営業マンや小売業のバイヤー等にいかに売り込むスキルが強化されるだけに過ぎない。
また、小売業であれば、「売れる商品を創造する」「顧客価値のある商品をつくる」という行為を第三者に委ねているため
確かに「市場変動に迅速に対応しうる」といったメリットはあるものの
その一方で、「商品に関する技術的知識とその蓄積」がないために川上が作ったものを
「物理的なスペース介在させて流して通すだけ」といった
単に、場所貸しと見せ方や陳列の仕方といったスキルが強化されるのみで一体どこに付加価値があるのか全く見えてこない。
一方で「リスクを賭けた縦の総合化」の場合、サプライチェーン全体に関わる知識が単なる数字や
頭の表層的なものだけではなく
経験を通じて獲得された体感的或いは知覚的な知識の蓄積が競争優位として働いているのである。
縦の総合化の代表例のひとつに通信販売業がある。
この通信販売市場が、コンビニや百貨店の市場規模を超えたという事実はまさに変化の潮流の一旦を示す象徴的な出来事であろう。
かって、娯楽が不足していた時代の日本のように、休日に家族で百貨店内で一日を過ごすといった時代はとうに終わり
成熟化経済の時代には、出来るだけ短い時間の中で、リスクなく、合理的な買い物をしたいという時間の価値が飛躍的に高まっている証左であろう。