OBT 人財マガジン
2009.02.25 : VOL62 UPDATED
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らしさと力
我が社らしさとは何か?
"らしさの追及""らしさとは組織競争力"である。まだまだ先のことだと思っていた第19回ワールドカップが南アフリカで開催される。
いよいよ近づいてくると、本当に始まるんだなあとわくわくする気持ちになる。
サッカーを観戦していて思うことは、その国その国の特徴、"らしさ"というものがあって、それが試合そのものを面白くしているということである。
例えば、次の開催国であるアフリカは、時間的にのんびりした雰囲気を感じさせるものの
試合になると一転して"驚異的な身体能力"というアフリカらしさが発揮される。
また、お隣の韓国は、絶対に諦めない強い精神力で、最後の最後までグラウンドを走り回り、ギリギリでの同点や逆転に結び付ける。
サッカーは長い間、ヨーロッパスタイルと南米スタイルの違いがあるとされてきた。
ところがサッカーがビジネス化してくるとの選手の国際的な移動(おもに南米の選手がヨーロッパで働くという意味だが)が進み、また組織的戦術が重視されるにともなって、以前のようなスタイルの違いが顕著でなくなってきたように思う。
技術の質や戦術の上では、いまやどの国も似てきており、韓国や日本の健闘も、その延長上に考えてよいのではないだろうか。
有力チームの敗退をジャッジの問題にすり替えるような論議があったが、サッカー後進国とばかり思っていた相手が、いつの間にか自分たちを脅かす存在になっていたことを思わぬ時に気付かされたためのいら立ちのように感じる。
それはともかく、スタイルの違いが小さくなったはずなのに、実際に試合を見るとそれぞれの国の
"らしさ"があるのも事実である。
華麗なサッカー、堅実な守りのサッカー、攻撃的なサッカーなど、それぞれを形容する言葉には事欠かないのである。
日本は組織的によくまとまったサッカーを志向している。
日本人がもっているまじめで器用で一生懸命に取り組む気質をベースに、組織的に守りまた攻めるサッカーを展開しているのではないだろうか。
"らしさ"とはその企業、その組織のもつベースとなる力、他との差別化の元であり、価値の源泉であると思う。
こんなことが興味深いのは、もちろん企業の組織とつながる問題だからであり、
力のある企業にはその企業なりの"らしさ"があると考えられるからである。
個人にとって組織とは判断の拠り所であり、行動の指針となるものであろう。
この部分が戦術として共有されていることが強みとなるのである。また個人は組織のなかでポジションが与えられている。そこで期待される役割をしっかり果たしながらも、
ダイナミックに動き回ることがゴールにつながる。
組織が個人の力あるいは個性をうまく引き出し、活かしていく際にも、
その組織"らしさ"と合致するなかで力が発揮されれば、より大きな力となっていく。
企業も組織も、"らしさ"というベースの上で基本を徹底し、さらにその上で個の力を育み、
組織全体の目標(ゴール)を目指す。そこに組織の実力が現れると言えないだろうか。
そう考えると、もう一度、わが社らしさ、組織の持つ"らしさ"を見つめ直し、"らしさ"を追求していくことが組織力強化のために重要である。
未曽有の経済危機の中で、生き残るためには、単なる規模の拡大や筋肉質の組織構造といった
汎用的な経営手法ではなく、真に考えるべきことは、どのような"らしさ"であれ、それが表現され、
共有されているところに力の元があるということである。
さらに言えば"らしさ"が組織に浸透し、行動のなかで自然に現れてくることが、
より大きな組織力につながる。