OBT 人財マガジン
2009.02.12 : VOL61 UPDATED
-
あなたは自分の会社に投資したいか?
今、流行りの次世代経営者養成等のセッションで
"自社に投資したいか""自社を買収しようとする投資家という立場"で
一歩退いたところから客観的に自社を見るという課題に取り組んでもらうことを時々やる。要は"自社の将来をその可能性と問題点"という観点から検討を試みる。
投資先としての自社を眺めた時、経営陣の手腕や知識或いは自社の
様々な経営資産等の内部要因について検討を行うこととなる。然しながら、いかに経営陣のレベルが高くても需要がじりじり落ち込み、
強力な競合にマーケットを奪われる、技術変化によって自社製品やサービスの価値が
失われていくといった外部要因がそれをはるかに凌ぐ打撃を与えることも多い。経営者の力を決して軽視しているわけではないが、企業経営を行う者が、
全くコントロールの及ばない環境要因を考慮し、何らかの形で
自社をこれに対応できるようにしておかなければならない。当然のことではあるが、企業のリーダーは自社の事業に影響を与える変動要因を
把握しておかなければならない。自社が提供している製品やサービスの価値に対する市場の総需要はどの程度か。
競争関係はどうか。業界の構造、ブランド力、資本力、顧客へのアクセス等といった点で
競合との違いはどの程度あるのか。
自社の規模、組織能力、営業力等の戦略課題は何か等である。事業環境を精査するプロセスや戦略構築の大前提となるものであり、
これで得た発見は、方針や戦略に転換していかなければならない。企業のリーダーにとって、ビジネス環境を読み取り、そこから得た発見が
自社にとってどんな意味があるのかという議論にもっと多くの時間と
エネルギーを投入すべきである。おそらく自社事業に直接影響を与える課題やトレンドは、大方の人たちが認識しているであろう。
然しながら、経営陣全体がこの事業環境に関するきちんと整合性のとれたコンセプトを
共有出来ているかどうかということになってくると甚だ疑問が残る。ビジネスを取り巻く環境全体が非常に複雑になる中で、ミドル層も含めて
自社事業に影響を及ぼすところの力学を十分把握しておくことが非常に重要となってくる。このために,組織リーダー達が、重要な潮流なトレンドについて絶えず議論し、
自社の方向性や戦略策定或いは変革の基盤となる事項について
きちんとしたコンセンサスを築いていくことが重要である。然しながら、ビジネス環境を読み取ろうとする姿勢は企業によって大きく異なる。
進んでいる企業は、外部で起きている環境の変化に絶えず関心を払っているが、
大方の企業は、本当の意味で外部の動き、潮流、トレンド等の変化に
さほど関心が向いていない。目の前の課題や問題に対応するだけで手一杯で遠い先のことなど
考えている余裕がないのであろう。
今回の経済危機のような大きな衝撃の波が押し寄せた時には得てして
このような企業が最も大きな洗礼を受けるのである。また、事業環境から得られる情報は、単なるこうしたリスクを回避するためにだけ
有用なのではなく新しいビジネスチャンスを生み出す手がかりにもなる。これからの時代、企業のリーダーは2つの目を持つ必要がある。
ひとつは、目の前にある脅威への的確な対応と同時にもうひとつは、
それほど明確ではないが、近い将来、自社の方向性や進路を決定づけることに
なるかもしれない中期的な変化やトレンドを探知する能力が極めて重要となろう。