OBT 人財マガジン

2008.11.12 : VOL56 UPDATED

経営人語

  • 現場力とは市井の喜怒哀楽を知覚しうる力である!

    今どこの企業に行っても等しく使われている言葉に"現場力"という表現がある。
    然しながら、この現場力そのものの理解の仕方は企業によって様々である。
    ただ単に、 "現場が大事"的な意味でステレオタイプ的に使用されているケースもあまりにも多い。

     

    現場力というのは、データとか数字ではなく、経験とか体験に基づき、現場の空気や事象から現場の本質を見極められるような知覚的な"目利き"ともいえる能力や力のことをいうのではないだろうか。

     

    ビジネスや商売、経営というのは肉体的に裏打ちされたリアリズムや体験に裏打ちされた知識がもっと重要なのである。


    何故ならば、体験化していない知識は肉体化していないためにほとんど無意味なのである。
    本当にその知識を使わなければならない問題に自分が出会ったときに使えないのである。
    例えば、ゴルフの本を100冊読んだ人がいきなりコースに出るようなものである。

     

    そのためにリーダーといわれる人間は、徹底的に現場に入っていかないと仕事のリアリズムが体でわかっていないから正しい判断や意思決定が出来ないのである。

    リアリズムに加えて、ビジネスや商売、経営における指導的な立場に立つ人にもうひとつ重要となるのは、"人間性"である。


    然しながら、今の学校教育も社会に出てからも人間性を磨くという意味でも能力を磨くという意味でも全くといっていいほど機能していない。

     

    古き良き時代に強烈なノスタルジアを持つ人たちの多くは、"品格の本を売り、買い"そして"紅白歌合戦を見る"。


    然しながら、この先、紅白歌合戦の視聴率が70%になること等もはやないのである。
    時代は明らかに変わったのである。

     

    そのことに気づいている人たちは確実に増えており、従って、こうすれば幸せになれる等という本や話の幻想にくれぐれもだまされてはいけない。

     

    幸せは自分でつかむものである。

    この国では上から見ている人たちが一番ダメなのである。

     

    間違いなく言えることは、一般庶民のほうが世の中の本質を見ているのである。
    だからこそ小泉さんのような人物が総理になれたのであろう。
    現場にいる人の方が本当のリアリティが見えるのである。
    日本の企業社会も現場の方が本質的に懸命である。

     

    そのために、これからのリーダーに必要なのは人間性×能力=人間力である。


    そのベースにあるのはどれだけ一人一人の市井に生きる人たちの喜怒哀楽というものを理解できているかということである。

    これは国の政策でも企業経営でも同じである。
    人の機微や情が分かっていなければ組織は動かない。
    まさに情と理の本質がここにあり、それが理解できないと組織のリーダーは務まらない。

     

    現場力とは、まさに、組織の現実を知覚できる人財そのものに規定される。

     

    On The Business Training 協会  及川 昭