OBT 人財マガジン
2008.05.14 : VOL45 UPDATED
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ベトナムの経済成長に思うこと!
4月24日から、事務所の若い人達と経済成長の著しいベトナムを訪ねた。
首都ハノイからベトナムに入りホーチミンまでの短い旅であったが、社会主義に市場経済システムを取り入れるというドイモイ政策が功を奏しているのか全体に非常に活性化している様子が窺える。
事実として経済成長率も概ね8%と極めて高い成長性である。
GDP構造は、農林水産業20.7%、工業・建設40.5%、サービス38.8%となっている。
小売・サービス業売上高成長率は22.9%、物価上昇分を差し引いてもおよそ15%の伸びで、経済成長率の2倍を記録している。国内消費は経済成長の原動力となっており、外国投資を呼び込む作用をしていることが推測される。
これは、小生が1980年4月29日始めて香港から中国に入国した際に中国で感じた成長への息吹、熱気と同様なものを今回のベトナムでも感じた。
当時は、南の香港から列車で中国に行く場合は香港九龍駅を出発、列車が国境である深圳に到着すると、香港側の列車を下車し、中国入国の手続きを受けるために線路沿いに数百メートル歩かされ入国審査を受けた後、中国側の列車に乗り換えるというものであった。
中国側の列車には解放軍が車内の警備にあたっており、極めて物々しい状況ではあったが、列車が中国広州駅に到着し市内に入った途端、感じるのは自転車やオートバイの洪水と行き交う人達の熱気や活気である。
勿論、肌感覚ではあるが、そこには、荒削りで全く秩序だってはいないものの多くの人達が意欲的でハングリーな状況、個人力が豊かで起業家精神に溢れそして欧米で教育を受けた人材の存在等が相俟ったエネルギーである。
その中国も13億~14億人の人口を抱えながら今や急激な経済成長を遂げアジアを代表する国に成長し、世界の大国としての存在感を確保しつつあり、インドもまた、然りである。
個人力、起業家が大きな価値を生む可能性を秘めるグローバルな時代、世界の注目は成長の中心であるこれらの国々にある。
ベトナム、インド、中国に共通する点は、歴史的に言えば、"外国からの支配"と"支配からの反抗"の歴史と言える。
このような歴史も一人一人の危機意識や自立性を育み成長の礎となっていることは否定できないであろう。
その一方で、グローバル化に抵抗し鎖国政策をとっているように見受けられる日本の存在感は薄くなる一方である。
例えば、日本企業が現地法人や出先を世界中に出しグローバルな展開をしている等といっても本社・本籍のパラダイムや在り様が全てを象徴しているのである。
少子化やゆとり教育のせいか自ら考えることをせず競争意欲に乏しく社会の厳しさや冷たさに本当の意味で触れたこともないのに自分は頑張っていると思っている指示待ち体質の若者達。
上昇志向よりもそこそこでいいという価値観のミドルクラスの人達。
改革の先送りとその場しのぎの無策な政治。
ベトナムを旅して改めて経済学者ヨーゼフ・シュンペータ-の「企業や社会は成長し、成熟するにつれて保守的になっていく。そしてこれを内部から壊していこうとする人間が出てこない限り、何時か必ず朽ち果ていく。組織が健康的に継続していくためには、創造的破壊が欠かせない」という指摘を思い出した。
事実として、企業でも、成長性のある組織では、問題や課題は多いが夢やロマンがある。
その夢を目指してぶつかり合い、そして力を合わせて全員で目標に向かって頑張る。
青臭い、荒削りな書生ぽい議論が社内に溢れている。
若さはまさにエネルギーである。
その一方で、老いた企業では、全員が仕事になれ、上手にスマートにこなし、洗練されているようにも見えるが、対立を恐れ、目先の協調を優先させるために活力はない。
そこには、みかけの協調はあっても本当の意味での協力はない
そして、子供じみた素朴な好奇心や正義感、青臭い夢等に対しても冷ややかである。
批評や分析は非常に巧みであるものの、"組織において何を成し遂げたいのか等といった思いはない。"
国も企業も人もその末病とは、この老いた企業のような状態ではないだろうか。
言わずもがなではあるが、まさに安定志向は、成長や変革への最大の障害といえるだろう。
On The Business Training 協会 及川 昭