OBT 人財マガジン
2008.03.12 : VOL41 UPDATED
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ミドルマネジメントを疲弊させる手段と目的のはきちがえ!
カナダの世界的な経営学者であるヘンリーミンツバーグが「かつての日本企業の強みは管理職を核とする現場の一体感であったはずだが、最近の日本企業ではそれが薄らいできているように見受けられる」と指摘している。
かつての日本企業の強みは経営やマネジメントによる強みだったのだろうか。
非常に疑問が残るところである。
強みを支えてきた本当の要因は、所属組織への強い帰属意識に支えられた現場の人達の意欲ややる気に他ならないのではないだろうか。然しながら、現状は、ヘンリーミンツバーグ教授のご指摘どおりそれは非常に薄らいでしまっている。
現在の日本企業の管理職は、野球に例えると、退任した前ヤクルトの古田監督のようなプレイングマネジャー型が当たり前となってしまった。加えて、いろいろな流行りの経営手法や制度等の導入がこれに追い討ちをかけているように思われる。
「新しい手法や制度を導入して社員がそれを狙い通りに運用すれば成功する」と考えている企業は多いがこれはかなり稚拙な考え方と言わざるを得ない。
例えば、人事制度ひとつとってもきちんと運用するということが、面談や提出書類等をやたら多く組み込んだ制度の導入につながり現場はそれを確実に実施することが求められる。
制度としては完璧かもしれないが、これだけの制度を運用しようと思ったら評価の時期に管理者は部下の評価をつけることに忙殺されてしまう。管理者の最大の責務は、本来、担当組織の成果を最大限向上させることにある。
然しながら、これでは管理者のエネルギーは社内事情にばかり割かれてしまい、その結果、競争力を下げてしまう。手段と目的のはきちがえといえる。
管理職を離れ、専門職になりたいという答えが4人に1人、役員になりたいというという割合と同水準となった。
そして組織のフラット化、がっちりと権限を握る一部の中核層とあまり権限のない層との二極化が進む。
肩書きは管理職であるが役割は曖昧という人達が増えていることと、中核層が息切れし、それ以外はやる気を失うという構図が今増えてきている。目の前の仕事に追われ、若手の育成に手が回らない管理職。
日本企業の強みであった「育てる文化」が廃れ、次世代の競争力を脅かす。
日本企業の育成方法のほとんどはOJT(on the JOB Training)といわれる手法に依存してきたが、昨今の状況では、これが有効に機能するかどうかはかなり疑わしい。
OJTが成立する要件は、一言で言えば、管理職が部下よりも優秀であるという前提である。
然しながら、時間が無いという理由で自己啓発していない管理者が圧倒的に多い。少し前の話にはなるが、日経産業新聞が日本の大手企業の部課長クラスに対して行ったアンケート調査によると、約半数以上の人達が、
●時間がなくてほとんど自己啓発していない
●自らの将来のキャリアプランについて何も考えていない変化の時代、かつてのように管理者が単なる自分の経験や体験に基づく指導だけでは、現在の若い部下たちに納得感を与えられるような指導は出来ないであろう。
最近の「我が社の管理者が部下の指導が出来なくなった」「部下の指導をしない」等と嘆く前に何がそうさせているのかという本質的な問題を考えてみる必要があるのではないだろうか。