OBT 人財マガジン
2007.09.11 : VOL30 UPDATED
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フレーム重視の悪弊
人材教育とは、
「単なる知識の学習ではなく、実践的な知恵を持つことの重要さ」
を社員や組織に教えることである!昨今、ビジネスや事業に関わる多くの人たちが過度の分析麻痺症候群に
陥っているように思える。
3C分析、SWOT分析,7Sモデル・・・・・・・・・等のMBA型の分析ツール。
これらを使って得意気にわかったような話をしているビジネスマンや
コンサルタントといわれている人達があまりにも多い。また、人材教育においてもこの手の教育手法を社員に受講させている企業も多い。
考えるべきは、本当にこれらのツール類を使用して分析すれば
正しい環境分析が出来るのであろうか?
フレームというのはあくまでもフレームであってこれは企業活動を
平面的に静態的には捉えられるかもしれないが、現在のように
めまぐるしく変化する環境下では自社の置かれている状況を
立体的に動態的に捉える必要がありこれには極めて不向きといえる。また、いくら分析を重ねても市場の真実や顧客の実相は見えず
ただただ企業の現場に疲弊感をもたらしていく。これが今、多くの企業が直面している現状のように思える。
例えば会議の前日には、売り上げや販売の動向、消費者調査等を
分析し、データ処理した資料作りに追われる。
会議では分厚い分析資料やスクリーンに映し出された分析データ等
「市場分析が導き出される商品は・・・・・・・・・・・」という検討がなされる。また、若い社員は、「ITツールを駆使した市場分析こそ最先端の仕事である」
と考える傾向も強い。分析型マネジメントの本家ともいえる米国でもここにきて
「分析至上主義の横行」に対して警鐘を鳴らす声が上がっている。経営学の世界的権威の一人であるカナダマギル大学教授、
ヘンリーミンツバーグは「米国流ビジネススクールで行われている
マネジメント教育と企業社会でのマネジメントの現状に対して
次のような強い批判を投げかけている。「マネジメントとは、本来、経験、直観、分析の3つを適度に
ブレンドしたものでなければならない。サイエンスに偏りすぎた
マネジメント教育は、「官僚的な計算型」のマネジメントを育みがちである。
ビジネススクールで教育を受けた連中がアーティスト気取りでいると
「ヒーロー型」のマネジメントを行う可能性がある。「官僚的な計算型」も「ヒーロー型」のどちらも責任ある地位には不要である。
必要なのは、「バランス型の人材」「人や組織に対して共感的な関与の
マネジメントを行える人材」である。上述のミンツバーグによると米国型のMBAプログラムは、
実際のマネジメント経験が皆無か、ほとんどその経験も無い連中を
対象とするためにサイエンス、分析とそのテクニックが中心となっている。
そして、卒業生は自分達がマネジメントを行う訓練を十分受けた人間と
誤解してしまうため現場もろくに知らない彼らが現場経験豊富な部下たちを管理する。その結果として人や組織のマネジメントが出来ず決定的な悪影響を及ぼしてしまう。
同教授は、「現場での経験」、「分析力」とのバランス、そして当事者として
取り巻く環境に主体的に関与して行くコミットメントが重要としている。
輸入ものの出来合いのフレームをいかにも大したものを使っているように
考える稚拙さからそろそろ脱却し、「自分たちの独自の評価軸で」
「自分たちの頭を使って」「自分たちの思考を駆使して」自ら自社にとっての
最適解を導き出すことこそ経営やマネジメントの本質であるというパラダイムを
組織に浸透させる必要があるのではなかろうか。