OBT 人財マガジン

2007.06.27 : VOL25 UPDATED

経営人語

  • パラダイム転換は、まず常識や通説の前提を疑うことから始まる

    企業経営でも、個人の生き方でも成功するためには、
    時流に乗る方法と、時流に逆らう方法の2つある。
    このような時代に成功するには、
    時代に逆らった方が成功する確率は極めて高いといえる。

    世の中の常識や通説の逆説で考えるという思考が重要であろう。


    例えば、私は、かつてタバコの常習者で1日に40本~50本、
    くわえタバコで仕事をしていたものである。
    「タバコは体に悪い」という通説がある。
    確かにタバコが健康に悪いというデータはいくつもあるようだし、
    「タバコが健康に悪い」というのは今や世界的な常識である。


    しかし、本当に全ての人間の健康にとってタバコが悪いのだろうか?
    全ての人間の健康に同じように悪いとすれば、
    その前提は、全ての人間がみな生物学的に同じ構造で出来ているということである。
    然しながら、それは本当だろうか?


    今後、ゲノム解析が進んでくると、ある遺伝子を持っている人には悪いけれど、
    別の遺伝子の人にはほとんど害を及ぼさないという結論が出てくる可能性がある。
    誰にとっても悪いというように思われがちであるか、
    かなりの違いがあって実のところはよくわかっていないのであろう。
    これは、アルコールに関しても同じことがいえる。


    このようなことが何故起きるかというと、
    医学の前提や常識というのは、「人間の体の構造は皆同じ」従って、
    タバコやアルコールに対して「人間は皆同じ反応をする」というような
    極めて画一的な前提のもとに言われていることのように思える。


    ある有名な医学の専門家の言によると「心臓という臓器は人によって
    かなり異なっている」ということである。
    世の中に信じられている医学や健康に関するパラダイムを
    疑ってみる必要があるのではないだろうか。

    これは企業経営でも全く同じようなことが言える。
    企業は、全て画一的で同じでは決してなく、企業によって全て異なるのである。
    それを全てもひとくくりのフレームで、ワンパーンの施策で判断したり
    対応している企業やコンサルタントと称する人たちがあまりにも多い。


    ひとくくりのフレームで考えれば、
    ワンパターンの施策を導入すれば競争力が高まるという考え方は
    あまりにも稚拙すぎる。


    例えば、日本を代表として米国を除く先進国では、軒並み人口減少問題を抱えている。
    人口が減るということはそれだけ需要が減るということである。
    その一方で、生産のほうは、これまでずっと生産性を高める努力してきており
    今後もその努力は続くと考えられるので
    次第に生産が消費に追いつき追い越していく供給過剰という現象であるとなっていく。


    これは極めて重要な意味を我々に示唆しているように思える。
    モノ不足(供給過小)の時代には、真面目さ、勤勉さみたいなものが極めて価値があったが、
    供給過多、消費過小の時代には、勤勉に真面目に働くことが邪魔になってくる。
    勤勉さや真面目さが一層の供給過多を生み出すからである。


    このような時代になると
    「真面目に働いている人よりも遊んでいる人の方が価値がある時代」となるかもしれない。

    ゆとり教育時代になってきて子供達が勉強しなくなると、
    学力低下が進み日本の競争力が落ちると心配されているが、この発想はあくまでも
    「生産性を高めて競争力を高めることが正しい」という前提にたった考え方である。
    然しながら、生産性の向上=競争力の向上という前提が
    これから先も正しいと本当にいえるだろうか。


    人口減少時代における生産性向上とは、
    従来のそれとは似て非なるものになる可能性が非常に高い。


    「生産性向上に対する前提の変化」
    「偉い人に対する概念の変化」
    「お金持ちに対する常識の変化」
    ・・・・・・・・・・・等。


    これまで我々が「疑うことのない当たり前のこと」として捉えて来た常識や前提を
    この「人口減少時代」には本気になって変えていかなければならないのではないだろうか。


                                   OBT協会 及川 昭