OBT 人財マガジン
2007.04.10 : VOL20 UPDATED
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経営リーダーに必要な全体観とは、気づく力である
最近、多くの企業の経営トップに"これからの御社の経営幹部や経営リーダーに必要となる能力は?"という質問に"全体観"という答えが返ってくることが多い。
ところが、全体観という能力を持つということは、さほど簡単なことではない。
全体観の前提として、重要なのは、"気づく力"である。
人間が、問題に直面したとき、その問題をどのように感じ取り、どのように解決していくのか、心理学ではそれを"気づく力"と言っている。
直面する事象や問題にばかり目を奪われていると全体の構造が見えなくなってしまう。
例えば、部分と全体の関係や構造を理解する。
また、一度、直面する事象や問題から遠ざかって回り道をすることが必要ではあるが、然しながら、これはかなり高度な思考といえる。つまり、全体観を持つということは、問題や課題に気づくための必要な基本概念のひとつである。
然しながら、問題や課題を見逃してしまっている人はことの他多い。
<問題や課題を見過ごしてしまう人の特徴>①見えない人
見えないものは人によっていろいろある。例えば、自分を取り巻く現在の状況。
自分がどのような状況に置かれているか見えなければ解決すべき課題は見えない。
環境の変化というのは、それが趨勢になるまではなかなか見えてこない。
しかし、変化の兆候というものが必ずある。
それを捉えることが出来れば課題や対応策も見出すことが出来る。
スーパーが登場した時、それを百貨店はどのように捉えたか、コンビニが登場した時、それをスーパーはどう考えたか、小さな変化の兆候を見逃すと、それが誰の目にも明らかな潮流となった時にはもう手遅れという事態になりかねない。例えば、多発する企業における不祥事隠ぺい門題は、物事の一面しか見えない怖さを教えてくれる。
欠陥を隠しさえすれば余計なコストはかからない。
ブランドイメージが傷つかないで済むというメリットばかりに眼を奪われて、それが発覚するリスクを非常に甘く見ていた。元本保証や高金利を謳った詐欺事件が後を絶たないのは、メリットしか見えない人がそれだけ多いということである。
リスクが見えない。物事の一面しか見えない。
もっといえば全体像が見えない。大局観に欠ける。
組織の問題で言えば、組織の内側しか見えない、内向き思考という人たちが多い。
組織内の常識や論理が判断基準や行動基準になっていて組織の外側に目が向かせないのである。
客観的な視点が持てないから組織が抱える問題についても気がつかないのである。最近社員教育の現場でもOJTが機能しなくなったといわれている.
上司が部下を教育するOJTは「上司の方が部下よりもいろいろなことを良く知っている」という前提条件の下で成立していた。
ところが昨今は、時代の流れ、技術の進展のスピードが速く、上司がそれらをキャッチアップできなくなってきている。
また、成果主義等の導入により、上司の方が部下よりも厳しい成果を問われるようになってOJTの条件が崩れたのである。このことは社員教育の構造そのものが根本的に変化したことを意味する。
この構造的変化を考慮せず従来型の教育を実施して成果が出ていない組織があまりにも多い。
②現状に安住している人
「このままでいいじゃないか」「これまでもこうやってこれたからも何とかやっていける」と自分が取り組むべき課題に気がつかず、流されている人である。
人は経験と言う学習を通じて一定の思考パターン、行動パターンが形成されていく。
これを心理学ではスキーマという。
スキーマを繰り返し使用する内に、ステレオタイプ化していく。
ここに大きな落とし穴が存在するのである。
スキーマに合致する情報は取り入れるが、合致しない情報は拒否するという現象が生じてくる。
③資源を持たない人
人は様々な資源を活用して課題を解決しようとする。
ひとつは自分の能力である。
能力に自信の無い人は「どうせ自分には解決できるはずがない」とあきらめてしまう。
そして、自然と課題から目を遠ざけるようになる。
そして課題を見過ごしてしまうようになる。
④主体性の無い人
課題を見過ごしてしまう人の行動特性として、最後に「当事者意識に欠け主体性が無い人」。万事が受身的で言われたことしかやらない人、自分の頭で考えない人には課題を見つけようという意識が働かない。
たまに課題にぶつかったとしてもこれは自分の仕事ではないと置き去りにしてしまう。
要はこの種の人達は、真剣に生きていないのである。全体観を持つということは、自分の会社の在り方、職場の在り方、仕事の在り方について考えつくすことである。