OBT 人財マガジン
2007.03.27 : VOL19 UPDATED
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古い商慣習が改革の障害に!
百貨店の市場規模が2兆円の減少、自動車の新車販売台数が往時の3/4に減少、
生命保険への加入率が87.5%まで低下等といった事象が至るところで起き始めている。
これは、国内市場が縮小、それも持続的な縮小圧力がかかってきているということであろう。
少子高齢化特に少子化の影響は、内需依存型企業を直撃し始めている。
日本が直面している人口減少は、"人口が一定の増加を続けるということを前提に
構築されてきた様々なトータルシステム"を新しく作り直すことが求められるであろうし、
企業自体も"これまでとは異なる全く新しい成長モデル"を模索する必要に迫られている。
特に内需依存型産業や企業は、これから大きな転換が求められよう。
それにも関わらず、新商品の開発や流行の制度・仕組み等の導入にはパワーを注いでも、
成長モデルそのものを根本から変えるということをしていないために、
本質的には変わっていないというのが実態であろう。
特に内需依存型企業群に見受けられる古い慣習が改革の大きな障害となっている。
例えば、ゼネコン等による公共工事の談合、
そして流通業界におけるリベートといわれる商慣習等は代表的な古い慣例といえる。
関係者も恐らく、これらの慣習の将来的な有効性については疑心暗鬼ではあろうが、
現状では、"過去から長らく続けてきた慣習を捨てる"ということは、
現実の"特に目の前の商売を失うリスク"を想定し、
本格的に変えることに踏み出せないのであろう。
例えば、流通業界のリベートと呼ばれる商慣習があるが、
リベートとは、メーカーが自社製品を多く売った小売店に決算期末等に
供給額のうち数パーセントを割り引いて支払う仕組みである。
日本の流通業界では、一般的な取引形態である。
そして、リベートや販促費は利益の源泉になる。
リベートには、後払いのものと前払いのものがある。
後払いのものは、販売実績に応じたリベートであるが、
前払いのものは、今後販売する計画の分を対象としてリベートを受け取るというものである。
要はリベートの前借である。
納入先であるメーカーは、リベートの前渡で予想外の出費を強いられることになるが、
その一方で魅力の乏しい商品を小売側に押し込むことも出来る。
また、小売の方は、目先の数字に追われてリベートの前借に手を染めると、
ニーズの無い商品まで店頭に並べざるを得なくなり、売り場は次第に劣化していく。
例えば、経営破綻したかってのダイエーは、決算期末が近づくと
有力メーカーに相次いでリベートの要請を行うという古典的な手法を引きずっていたことで
マーチャンダイジング力や購買力が大幅に弱体化してしまった。
また、法的整理となった長崎屋では、
経営陣は破綻する数年前から不透明な取引形態の根絶を目指したが、
改善が遅々として進まず、結果的に客足が遠のき破綻してしまった。
内需依存型企業の経営を難しくさせているのは、
国内市場の縮小圧力という外的な環境要因だけではない。
"曖昧な取引を排除して原価を引き下げ、
価格競争力を高める"といった思い切った事業改革を行うことなく、
馴れ合いスタイルを維持していることで、「体質転換や改革が遅々として進まない、
という自らの組織体質」に、その根本的な要因があるのではなかろうか。