OBT 人財マガジン

2006.08.08 : VOL5 UPDATED

経営人語

  • 【企業の衰退はどこから始まるか!】
    企業経営は小さなことの積み重ね、小さな問題への感受性が重要

    経営者というのは小さな問題への感受性が非常に大事であると前号で申し上げたが、経営者が表面的な問題しか見ていないような企業は今はうまくいっていても必ず時間が経つに従って次第に組織が衰退していく。


    企業とはそのようなものなのである。

    私の自宅の近くに2軒の食品スーパーがある。
    賞味期限のある食品の販売においてこの2軒の対応は大きく異なる。
    賞味期限が多少過ぎた商品をA店はそのまま販売しようとするがB店は販売しない。頼んでも「申し訳ありませんが、これは販売できません。別のものをお選びいただけませんか」と店員は頭を下げる。


    買うと言っている顧客に売らないのは機会ロスにつながるけれど、賞味期限というルールを設けた限りは常に例外なくそれを遵守する。
    重要なのは、自分の側により厳格な規範を適用している姿勢が重要なのである。自分により厳しい規範を適用する。その場の顧客の要望には応じられなくても、長い目で見れば必ずそれが顧客の満足の向上に寄与し信頼を高めることにつながる。


    ここに外部の人間は、その企業の経営を見るのである。

    例えば、以前の大手流通業であるD社で慣例的にやられていた仕入れのスタイル。仕入れ契約は、買取契約でありながら、売れ残るとバイヤーが"来期も面倒見るから"という言葉で返品を要求してくる。どうせ返品出来るからという前提でマ-チャンダイジングとか仕入れを起こっていると甘くなってしまって結果的にマ-チャンダイジングの力がつかない。


    これは、社員の服務規程についても同様のことがいえる。
    経費のわずかな水増し申請一回で解雇という社員の服務規定を敷いて入社時にそのむねの契約をさせる米国企業がある。これは、「わずかな」を許容する精神がそのうち「かなりの」にふくらみ、やがて多額に至ることを思えば、職業倫理のハードルを最初から高く設定するということであろう。


    我々は、「公正の原理」の大切さは理解しながらも「うちわの理屈」にどうも甘い側面がある。昨今、不祥事を起こしている企業に共通しているのは、公共性と倫理性が無視されて「うちわの理屈」で動いているということである。


    企業は、トップの経営哲学によって風土が一新する。
    組織もその組織のリーダーのポリシーと考え方によって大きく変わる。


    リーダーに求められるのは、単に利益を生み出す能力だけでなく、職責にまつわる倫理性であり、さらに大きくいえば人や組織を浄化することができる思想である。


    大事なことは、組織の中に自己否定の論理を内包することである。

    企業や組織の本当の強さというのは、このようなものなのである。

    企業や組織の強さは、どこかのコンサルタントがいっているような素晴らしい秘策なんてなて、
    "当たり前のこと""決めたこと"をいかに徹底してきちんとやり抜ける組織かどうか"ということである。