OBT 人財マガジン
2006.07.26 : VOL4 UPDATED
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【企業の衰退はどこから始まるか!】
企業の寿命は外部環境のみに左右されるのだろうか?会社組織は創業から時間が経つにつれて次第に腐っていくというのが一般的な傾向として見受けられる。
特に歴史の長い企業や内需型産業にこの傾向が強い。
そう感じさせるのは、組織年齢の増加と組織の健全性にはかなりの因果関係があるということであろう。
企業や組織の衰退の要因を、MBA的に或いはビジネススクール的に表現すれば"環境変化への対応遅れ"なんていうことで最近は、いろいろな輸入ものの経営フレームを用いていかにもわかったような後づけの理屈で商売をしている連中が大学の先生方或いは我々の同業者の中にもたくさんいるが、私自身は、自分のビジネスマンとしての経験も含めて、企業や組織の衰退というのは、外部環境によって崩壊していくのではなく、企業組織の内部から腐敗し衰退していくという確信に近いものを持っている。
外部環境への対応を妨げるものこそ組織の腐敗であり、企業の本質的な問題なのである。 然しながら、組織が腐っていくという現象は、時間の経過と共に全ての企業組織に必然的に発生するものであるが、組織が腐っていくという現象は、極めて小さな事象としてしかも企業業績との直接的な因果関係もないのでそのほとんどが見逃されてしまいがちである。
例えば、外部からの来客者に対して誰も挨拶しない、報告すべき事項や決裁を必要とする書類がやたらと増えている、会議や打ち合わせが非常に多い、規定やルール違反が多い、残業や休日出勤が常態化している等等。
このような小さな事象にその企業の抱えている組織体質の本質的な問題が象徴されているのである。
企業経営や組織力とは本来、日常の小さなことの積み重ねなのである。
従って、小さなことだからといってそのまま放置しておくということは、企業が次第に衰退に向かっていく問題を蓄積しているのに等しい。
例えば、今の時代、多く企業の経営者は、社員にクリエィティブな能力の発揮を求めてはいるものの、社員が創造性を発揮しうるような物理的な環境は、事務所コストの削減という名目のもと提供されていない。大方の企業では、事務所スペースは、単に物理的に仕事をするスペースとして見做されているたけである。
クリエィティブさを社員に求めながら、実際には事務所賃料を節約するために雑然と密集した環境に平気で社員を押し込めている。そして新しいアイデアが出てこないと"ウチの社員は新しいアイデアが出せない」と言って嘆き続けるのである。
このように経営と組織の細部で行われていることが全く無関係に放置されている企業は、往々にして経営方針や経営施策は単なるスローガン化し現場に浸透することはまずない。
経営とは、現実に業務が行われているプロセスそのものである。
その企業の本質や経営の実態は、表面的な言葉や販促物ではなく、組織の細部における「日常の小さなこと」にこそ現れる。
それが「企業経営における小さなこと」の意味である。
多くの企業組織では、このような小さな事象が将来のリスクにつながるという認識がほとんど出来ていない。
業績の悪化や社員の退職といった現実の危機になって初めて組織がうまくいっていないということに気づくのである。
但し、その危機は、外部環境の悪化や予想しえなかった不運によってもたらされた一過性の危機として認識されやすい。
組織の衰退を回避していくためには、日常の小さな問題を放置せず絶えざる改革と進化を続けることが必要なのではないだろうか。