OBT 人財マガジン
2006.04.25 : VOL UPDATED
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会社は誰のもの?
「株主価値重視」が叫ばれて久しいが、「株主価値重視」が株価重視の経営になり、経営が会社の将来の利益よりも目先の利益だけを考えるようになった。
勿論、個人株主比率が本質的な議論ではないが。米国の場合、個人株主比率が40%超といわれるのに反し、日本ではその比率が20%以下といわれる状況下でその大方が機関投資家であり、機関投資家の資産を運用しているファンドマネジャーは、成績報酬で資産の運用成績が良ければ報酬は上がるが、悪ければ下がる。更に悪ければ首になる。
そこで出来るだけ短期間に運用成績を良くしようと上場会社に対して株価が上がるような施策をとれと圧力をかける。
然しながら、株価がその企業の実態を性格に反映しているかというと現実の姿よりもどちらかというと将来の収益性を見込んだものであり、そこには予想が入る。予想とはあくまでも主観的なものである。この5月の改定会社法の施行により、配当や業績発表が半年刻みから四半期刻みとなり取締役の任期が二年から一年に短縮され、経営者は従来の倍速で結果を出さなければならない。
市場を意識した新たなスピード経営への挑戦は、企業に新たな強さをもたらす可能性がある一方でライブドアに代表される「短期志向の経営を助長し、会社の安定度を損なう」ことにつながることは間違いのないところである。会社の経営が悪化して株価が下がれば、株主はタイムリーに売り抜いて逃げることが出来るが、大方の従業員は、株主とは、異なり逃げることは出来ないのである。
生活を賭けて長期的に会社を支えていくのはまさに従業員である社員に他ならない。会社は株主と経営者だけのものではないし、株主と経営者だけでは決して成立しない。企業経営に人財である従業員をどのように位置づけるのか。
まさに経営者の経営観そのものに規定される。これからは“経営のスピードアップ”という短期的経営課題と“組織の持続的な競争力の維持向上”という長期的経営課題の両立が不可欠となろう。
いずれにしても長期的経営課題である“人財価値重視” 経営が問われるところであり、これが持続的な競争力につながることは間違いないところである。