OBT 人財マガジン
2012.08.22 : VOL146 UPDATED
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第四回【成長の瞬間】立場が人を育てる
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株式会社 ベジテック
農産加工事業部 立川工場長
根岸 勇一郎さん
"育つ人と育たない人"の差は何なのか?OBT協会では、人が成長するのは仕事の場での経験・体験だと考えています。そこで、今回我々は第一線で働くビジネスマン達にどのようなプロセスを経て育ってきたのか、その成長の軌跡について伺いました。(聞き手:伊藤みづほ、菅原加良子)
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【プロフィール】
根岸 勇一郎(YUICHIRO NEGISHI)
1976年生まれ。2001年にベジテックに入社。入社以来工場に勤務し、グループ長を経て、2012年より現職。
株式会社ベジテック(http://www.vegetech.co.jp/)
1969年、東京都昭島市に株式会社紀之國屋を設立。青果物の加工・販売、仲卸業務や土壌調査、残留農薬検査、栄養価分析、品質管理業務等幅広く手掛ける。1992年、株式会社多摩サービス及び株式会社埼玉青果サービスを吸収合併し、社名を株式会社ベジテックに変更。
資本金/4億3,750万円、従業員数/480名(臨時社員含)、売上高/559億円(平成24年3月期) -
自身の未熟さを知る
────今回、私たちは"成長の瞬間"について様々なビジネスマンの方々にお話をお伺いしております。同じような環境の中で育っても、そこから何かを学びとる人と、何も学ばない人(学べない人)、その違いは一体何なのか。どういった経験を経て成長したのかをお聞きし、その成長プロセスをひも解いていきたいと思っております。根岸さんは、ご自身の成長に大きく影響を与えた物はなんだったと思いますか?
自分が成長したとはあまり思っていないですし、全然まだまだなのですが、工場を任されるという経験は、非常に影響が大きかったと思います。以前は、私も工場全体ではなく、包装室だとか、一つの部屋を管理し、一つのラインを管理している立ち位置だったんです。パートさんと一緒に現場に入って仕事をしながら、コンテナを運んだりとかをしていて。でも、たまたま今の工場で製造のトップの方が辞めることになって、その次っていなかったんですよね。年齢的にも経験的にも僕がちょうどその下くらいで。それで、その時の上司も『やってみなよ』て形で、この工場を任されるようになったんです。
────以前から、少しずつでも工場全体を見る・管理する等のご経験はされていたのでしょうか?
いえ。全くしていないですね(笑)当時、僕は選手だったと思うんですよ。ラインに入って、商品のコントロールをして、生産性を上げたり、自分が改善をしてやり易くなったりすることが凄く好きで、パートさんたちと目標をもってやっていて、毎日が充実していたんです。なのに、いきなり全体を見ろ、管理しろって言われて、正直何をしていいか分からなかったですね。
────管理する人数はどれくらい増えたのでしょうか?
今までは、包装室7ラインで50人くらいの人とやっていたのですが、全体を見るとなると社員も含めて160人くらいを見なくてはいけない。ここは24時間365日稼働していますので、夜もあるし、昼もある。本当に手探りな状態でした。しかも上司は工場に常駐していないので、常にコミュニケーションをとって、いろいろ相談をしながら進めて行きました。そういった時に、OBT協会さんの次世代リーダー研修の話があって、それが凄く参考になったんです。
────根岸さんにとって、研修からどういったことを学ばれたのでしょうか?
改めて、自分を見つめ直す場になりましたね。危機感やグループ長として会社での今の立ち位置を感じるようになりました。今までの自分は、目の前のことだけ、自分のラインだけがうまくいっていれば、工場の数字が良くても悪くても、気にしていなかったというか。でも、トレーニングでは今の世の中の潮流や、強いと言われる企業を題材に"その企業の本質的な強さとは何か"の議論や"我が社を俯瞰"するということをしたのですが、そこでは目に見える部分だけではなく、もっと広く・高い観点から物事を捉えることが重要だということを学びました。
ただ、そういった観点から今までの自分をみると、自分自身は何の知識も力もないなと感じたんです。だから、もっと自分から積極的に勉強しないといけないと思いました。それまでは自分は管理者で、一つの部屋を任されている思ってたけれど、それって世間からしてみたら、本当に大したことないなって。普通に会社に勤めていると、あまり危機感って無いじゃないですか。でも辞めて一人になった時、自分は食べて行けるだけの力があるんだろうかって思いましたね。
────同じ研修を受けても、根岸さんの様に聞いた内容を自分事として受け止め、自身に置き換えられる人もいれば、まったく自分には関係がないと思う人もいます。根岸さんは研修を通して、どういった気付きを得ましたか?
そうですね。やはり危機感ですね。今ここでポンって外に放り出されたら、本当にどこも働くところがないなって思いましたから(笑)そういう気持ちで聞いていたので、及川先生の一言一言がグサグサって刺さったんだと思います。
それから、私は現在立川工場の管理者なんですけれども、ずっと選手だったから、管理する立場になっても、いかに生産性を上げるかとか、いい環境を作ってあげるかだとか、そういったことになかなか頭が切り替えられなくて、部下を伸ばすことも出来ず戸惑っていたところだったんです。そしたら、及川先生が『経営者の視点でものごとを考え、常に広い視野で見ていないと下の人たちも伸びないよ』というようなことを仰っていて、確かにそうだよなと。その時、上に立つ人の責任って大きいんだなって、改めてわかったりもしましたね。そこから実際にどういうことをやればもっと工場がよくなったり、部下たちが目標を持って主体的に動けるのかとかを考えるようになりました。だから、研修で学んだことをどんどん業務とつなげていくようにしていましたね。
────部下を育てる上で、なにか気を付けていることなどありますか?
今年から工場長になったので、僕も今度評価する側になりました。そうなると部下に説明責任が必要にある。それには部下の言動だったり、行動だったりというところを、しっかり見て把握していかなくちゃいけないし、一部の出来事を見るのではなく全体を見て、そして、工場全体の動きとも絡めて考えながら評価しなくちゃいけない。なので、常にメモ帳じゃないですけれども、部下の動きだったりをメモ書きをしたり、そういう小さなことなんですけれども、始めたりしました。これもトレーニング中に及川先生に教わったことですが(笑)確かに、日々の事って積み重なって行くと忘れちゃいますよね。でも、たわいもないこともメモしておくと『こういことやってたよね』って誉めることもできるし、そういうことって、部下からしたらモチベーションに繋がるかなって。私も上の人からやってもらって嬉しかったので。その他に説明とかする時も、理路整然と話ができるようにとか考えていますね。
自身の役割を認識する
────部下の育成も含め、全体をまとめる立場になって大変だったこと等ありますでしょうか?
一時期、工場でクレームが結構発生してしまって、その時は本当に辛かったです。上からは『どう対応するんだ』と言われ、僕もそれは部下の責任ではなく、自分の責任だと思っていまして、本当に自分自身の考え方や行動を変えないと、工場も変わらないと思いましたね。
最終的にクレームの件は、得意先に私と専務と本部長で謝罪に行くことになって、専務と本部長が得意先に対して凄く謝っていて、本当に申し訳なく思いました。改めて、自分の責任だと思いましたよ。それで、謝りに行ったあとファミレスに寄ったんですけれども、専務は普段から厳しい方なので『もうお前なんかいらない』って言われるのかと思っていたのですが、『なんかあったらおれが全部責任取るから』と言われて、がーって胸が熱くなって涙が溢れちゃったんですよね。"責任を取る"って、上の方の仕事なのかもしれないですけれども、実際に一緒に謝ってくださって、本当に感動で、今でも思い出すと泣いちゃうんですけれども(笑)だから、そういった方に対して裏切れないですよね。それに、その時に日々自分自身が成長していかないとダメだと強く思いました。
────仕事は自分一人ではなく、いろいろな人に支えられて進めているんだという事が改めてよく分かりますね。また、これからは、より良い職場を目指す為に、一層社員やパートさんの力が必要になるかと思います。
そうですね。元々、うちの工場の社員は自分達で考えながら、改善をしたりして、やっている人が多いんですけれども、目標を持たせることが大事だと思っています。それは、パートさんも一緒なんですけれども。ちっちゃな事でもいいんで『今月は少しでも生産性上げましょうね』でもいいですし、『クレームをゼロにしましょうね』とか。チームになって目標を達成することでやりがいって感じると思うんです。それは、現場を管理している社員たちもそうだし、目標を持たせることによって、人ってそれに対してモチベーションが上がってくる。そういう意識付けが重要かなって。
それに、この立場になってから凄く考えるようになったことが、いい環境にしてあげたいということですね。それは、僕自身がそういうことを思わないと多分変えられないと思います。担当の人達が変えようっていうのは無理だと思いますし、そういう部分で、上の者としての責任というか、考え方が変わりました。
────そうですね。そういった下からの思いをきちんと受け止めて改善して行くということは非常に重要な事ですね。その他、今度は工場ではなく、ベジテックという会社全体の為に何か行っていること等はありますか?
研修を通じて、今まで知らなかった人達たちと交流することで、随分と他部署の人達とコミュニケーションを取るようになったんですね。みんなとは研修を通じて同じ勉強をさせてもらったり、経営層への提案として、会社の将来についてのプレゼンテーションをした仲間なので、同じ視点で話ができるんで凄く話やすいんです。それに、私は30代なんですけど、30代とか40代の人たちが、自分たちが変えていかないとって意識が前に比べて非常に強くなっています。前は誰かがやってくれるんじゃないかって、たぶん私もそうでした。でも今は違います。『自分達が変えなくては』という意識が強くなってきました。
────御社では、現在会社のステージを変えている最中ですよね。それに伴って、自主的に動ける人財を多く育てようとしておられます。私たちも、いろいろな企業でトレーニングを行っているのですが、やはり、研修だけで人を育てるのは限界があります。だからこそ、学んだことを現実の場で活かすチャンスを与えるってことが必要になってくると思っています。そして、御社は、そういった場を積極的に経営陣の方が作っていらっしゃいますよね。
そうですよね。じゃなきゃ僕なんかもチャンスもらえないと思います(笑)
────そういった事に対して、会社からの期待は感じますか?
それは本当にありがたいことに感じています。だから、裏切れないなって思いますね。それに、専務は『いつでも入れ替えするぞ』と、そういうプレッシャーも同時にかけるので。本当に厳しくもいい経営陣に恵まれたなって思います。会社も本気で考えていてくれてっということが大きいと思います。
────最後の質問ですが、根岸さんの今後も目標をお聞かせいただけますか?
そうですね...。ちょっと話はずれてしまうのですが、今、動いている工場も今後どうなるかわからない。そういった危機感はあります。だからこそ、読めない未来に向かって、アクションを起こして行かなくちゃいけないと思っているんですね。そういう意味では、仕事をするってことは常に先の事を考えていなくちゃいけないのかなって思います。答えになっていなくてすみません。
でも、今までは、そんなこと考えてなかったですが。研修を受けて、考えるようになったというのは事実です。やはり自分達で、10年後どうして行ったらいいんだという"考え"を常にもたなくちゃいけないんだなって。。
それに、今は『私はこれをやりたいんだ』って明確な考えが無くて、経営者の方に提案出来ないのが現状です。次のステップはそこかなって思いますね。社長と専務は常に考えていますから。休みの日でも何でも。いろいろな情報を持っていますし、たまに今後の戦略についての話をしていて、『何か質問あるか』ていわれて、質問しても即答してくれます。ああゆう風に自分達もなって行かないといけないし、そういう自分になりたいと思います。
────根岸さんは、管理者という立場、そして、会社の環境や上司との関わりにを通して、様々なことを吸収し、成長されて来られたんですね。本日は、非常に貴重お話をありがとうございました。
インタビュー後記
根岸さんのお話を伺いし、改めて感じたことは、人は与えられた環境や与えられた立場によって、大きく成長するということ。しかし、それには素直であること、柔軟であることが必要だと思った。いくら新たな環境、新たな立場に立っても、今までの自分の考えを捨てきれずにいると成長はできない。今の自分を見つめなおし、出来ていない部分を素直に置けとめることから成長するのだと改めて感じた。
聞き手:OBT協会 伊藤みづほ
OBTとは・・・ 現場のマネジャーや次世代リーターに対して、自社の経営課題をテーマに具体的な解決策を導きだすプロセス(On the Business Training)を支援することにより、企業の持続的な競争力強化に向けた『人財の革新』と『組織変革』を実現している。
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