OBT 人財マガジン
2012.06.27 : VOL142 UPDATED
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人が育つ・人を育てるとは(後編)
「人が育つを考察する」のコーナーでは、今後、"人の成長・人の育成"について
様々な方々にお話をお伺いしていこうと考えております。
第一弾7月から4回に渡り、第一線で活躍しているビジネスマンの方々に
【人が育つ・成長する】という観点で、ご自身が歩まれた成長のプロセスを
語っていただきます。"育つ人と、育たない人の違い"は何なのかを探る!
また、9月掲載からは、実際に育てる側の方々にインタビュー
【人をどのようにして育てるか】をお送りさせていただきます。
是非とも、人財育成のヒントにして頂ければ幸いです。
つきましては、今号と次号でOBTが考える
「人が育つ・人を育てるということはどういうことなのか!!」を掲載しております。
是非ご覧ください。
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前回は、人がどのようにして育つのかについてお話させていただきましたが、
http://www.obt-a.net/web_jinzai_magazine/enterprise/2012/06/post-110.html
今回は、人を育てるという観点でOBT協会の考えを記載させていただきます。
1.現在の自分をわからせること
人が育たない原因の一つに、自分の力(能力)を自己理解出来ていないという場合がある。それは、今の自分のレベルを正確に把握しきれていないということである。人は、自分のことについて分かっているようで、分かっていないことが多い。そこで、まず、それらを分からせる(知らせる)必要がある。なぜなら、自身の出来ていること、出来ていないことを自分自身で見直すことでしか、今の自分の力を知ることが出来ないからである。そこで重要になるのが、教える側の接し方である。最近、怒れない上司が増えているというが、出来ていない事をきちんと教えない限り成長はできない。なぜなら、出来ていないと指摘されて、初めて今の自分と向き合えるからだ。教える側は、時に厳しい役回りになることも重要である。
2."知る"ということを教え、"分かる"までをサポートする
日々の仕事は、毎日の慣れで出来てしまう。しかし、より質の高い仕事を目指そうとすると、その背景を理解していることが重要になる。つまり、優秀な人財を育てるためには、物事の背景を理解させ、部分的なものではなく、全体像を見せる。そして、"本質を知る"ということ教えなくてはいけない。また、それらを教えればいいというのもではなく、その教えたことが本当に理解できるまで、サポートする。つまり、実際の経験の場を与える、または、一度で理解出来ない場合、何度も根気強く教えることが必要になってくる。よく、仕事の効率を考え、部下に教える(やらせる)よりも、自分でやってしまった方が早いという考えの人もいるが、それでは人は育たず、また、そういったことを続けると自身に負荷がかかり、最終的に仕事の効率を下げてしまうことがある。
3.真理に基づく指導
教わる側だけではなく、教える側の教養も重要になる。
それは、何を教えるかではなく、誰が教えるということである。
物事の本質を理解しておらず、作業だけが早く得意な人が人財の育成をしても、作業人間が増えるばかりであって、物事の考え方、流れ、つながりなど本質の部分を教え込むことは出来ない。つまり、教える側がきちんと普遍的な真理や物事の背景を理解していなければ、教わる側がより深い考え方を得ることはなかなか難しいのだ。物事の本質や背景を理解しない限り、いくら作業・手段的なことが得意であっても、他の仕事に変わった時、使い物にならない。
4.会社全体で人財を育てる
人の育成は、上司・部下2者間の間で捉えられることが多い。つまり、上司に任せておけば人は育つと思っている人が非常に多いのだ。しかしながら、本来、人財育成は会社が中心となって行うものである。なぜなら、個人でいくら人を育てようと思っていても、限界があるからだ。組織内の異動や経験の場の提供などは、人財育成のために、会社が率先して行わなくては成し得ないことである。つまり、人財育成には企業全体での積極的な介入が必要になるからだ。
上記で上げたように人を育てるためには、育つ側の構え(前編参照)の問題もあるが、育てる側の問題もかなり大きなウエイトを占めていることがわかる。そして、育てる側で最も大事なことは、すぐに成果を求めないことである。企業が人財育成に投資をする際も、やればすぐに成果に結びつくと思っている人がことのほか多い。しかし、人は急には育たない。様々な経験を少しずつ積み重ねていくことが必要なのである。中途半端な教育ほど、無駄になってしまうということを肝に銘じ、長期的に関わっていくことが重要になる。
OBT協会 菅原加良子