OBT 人財マガジン

2012.04.11 : VOL137 UPDATED

人が育つを考察する

  • 【新入社員にインタビュー①】
      ──経験したことのない新しいフィールドを求めて 

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      渡邉 侑さん
       
      「これから企業社会に飛び立つ新入社員は、どの様に育っていきたいと思っているのか、 そして、会社や仕事をどの様に捉えているのか」 期待に胸膨らませた大学4年生に、新社会人としての率直な考えを訊いてみました。(聞き手:海津茂史)
       ※インタビューは入社前、2012年3月に実施


    • 【プロフィール】

      渡邉 侑さん(RYO NAGAUSHI)

      早稲田大学を卒業。 2012年4月より、情報サービスを主な事業とする出版関連会社に入社。

    • ────渡邉さんは4月から出版関連会社に入社されると伺っていますが、まずは、志望動機についてお聞かせ頂けますか?

      正直な話、最初は就職活動にまったく興味を持てなかったんです。自分のやりたいことが、はっきりとわからなかったですし。僕、9か月間アメリカに留学していたのですが、その時は漠然と、ある有名なアニメの制作会社に憧れていました。幼少期の頃、そのアニメのファンだったんで。それで調べてみたんですが、その会社は日本人も含めて本当に色んなバックグラウンドの人が働いていたんですよね。それで日本に戻ってからは、「そういうクリエイティブなモノをつくっている人の集まり、環境で、自分も刺激を受けられたら」と思って、必死になって探した結果、今の会社にたどり着いたんです。

      ですので、最終的な決め手は、そこで働く"人"ということになるんでしょうか。「自分は本気でこれをやっていく!」「将来、世の中にこんな影響を与えていく!」っていう自信を持って語る人が多くて。むしろ僕なんかは逆の気質で、あんまり自信を持てない方なのですが、そういった"自分に持っていないもの"を持っている方が周りにいれば、いい刺激を受けられたり、自分もそういう風になれたりするのではと思ったんです。

      ────会社ではどの様なことを習得していきたいですか?

      うまく言えませんが、"自分は何屋か"という得意分野をはっきりと言えるようになりたいです。周りからも「これならお前に任せられる」という風に。恐らく営業に配属されると思うのですが、例えば「折衝する時は渡邉侑しかいない」と言われる様になりたいですね。

      ────会社に入ると、渡邉さんが思い描いた事と違うことを会社に求められるかもしれませんが、その時はどの様に受け止めようと思っていますか?

      ...そうですね。やりきらなければならない場面もありますよね...ただ、思った通りに事が進まなくても、耐えること、ストレス耐性は必要だと思います。学生時代、色んなプロジェクトやNPOの活動に参加していたんですが、海外では唯一の日本人ってこともあって、結構一番下の立場だったんです。逆らえないし、当時はそんなに流暢に英語も話せないし、振られたことを処理するのに精いっぱいで、心の中で葛藤があったりもして。そういった経験から学んだことって自分の中では結構大きくて、これから先も糧にしていければ、と思っています。

      ────逆に、会社や上司に期待すること、求めることはありますか?

      そうですね、自分が経験したこともないことを経験している人、違ったフィールドで活躍している人...社外の方も含めてそういった人を多く巻き込んで仕事をできる機会があればいいなと思っています。例えば「面白い企画を上げてこい!」って言われた時、どうやったらクリエイティブになれるかというと、自分が経験したことがないフィールドとどれだけ接点があるか、ということが大事だと思っているんです。

      僕は文系出身なんですが、プログラミングが得意な学生だったり、一方で書道家の方だったり、一方で政治家だったり...全く違う経験を持った人と出会った時に「この人達、何を考えているのかな」って探っていると、何気ない一言でも「これ、おもしろいな」って思えることが、結構あったりするんですよね。そういった場ですとか、機会を提供していただきたいなと思います。

      ────御自身でも、そういう活動に参加しているんですか?

      はい、学生時代もよく参加していて、今でも色々なところに顔を出しています。あと最近、竹田研究財団(※)の下で古事記を世界に広める活動に参加させていただいております。古事記が編纂されてから今年で1300周年なので、その潜在的な面白さを日本国内と世界に広めていく活動をしているんです。今はまだ少ない運営メンバーでの活動ですが、草の根的な繋がりでやっています。そういう場をつくっていくことで、いろんな人が集まってきて、話していくと、"自分にないもの"を得ることができる、っていう風に考えているんですよね。人によって持っている"色"みたいなものがあって、「これは出会ったことがない色だな」と感じる時は、とてもおもしろいんですよね。そういうところで学ぶことは、個人的にすごく大きいと思っています。...あと、好奇心があるのか、何かわからないままですと、眠れないんですよね。気になったことはその時にすぐ調べるタイプなんです。

      (※一般財団法人竹田研究財団:平成18年から全国で日本を学ぶための勉強会を開催してきた竹田研究会が設立者となって、平成23年11月16日に設立された財団  http://www.takenoma.com/kojiki1300.html


      ────就職活動をされて、率直なところ、どの様なことを感じましたか?

      日本人は日本でしか就職活動をしていない現状は個人的に問題だと感じました。留学から戻ってきて周りを見ると多くの韓国の方、中国の方が日本の学生と肩を並べて就職活動をしている。でも例えば、日本人がシンガポールで就職活動をしているか、というと、そんなことは聞いたことないですよね。留学経験があるからかもしれませんが、海外に行ったら色々な国籍、人種の方が働いているのに、日本に来たら日本人しかいない、このことに違和感があったんです。ペリーの黒船ではないですが、来るもの拒む閉鎖的な雰囲気って、日本にある様な気がします。

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      ────ビジネスパーソンとしてどういう風に成長していきたいか、お聞かせください。

      今までの経験でしかないのですが、僕は"成長"って、二つあるんだと思います。一つは、今、できることが更にできるようになる成長と、もう一つは、できなかったことができるようになる成長。

      まだまだ漠然としていますが、"できなかったことができるようになる"成長をしていけたらな、とは思っています。入社してからは初めてのことばかりですが、経験をつんでからも安心するのではなく、やったことがないことができるようになったり、新しい価値観を身に付けたりすることを実感していきたいですね。

      ────その為には、どの様なことが必要だと思いますか?

      繰り返しになりますが、やはり、自分とかけ離れたフィールドの人とどれだけ接点を持つことができるか、ということが重要なんだと思います。今までの自分とはまったく関係の無い人達とどうやって出会うか、接点をつくれるか、というのを考えながら仕事をして、一つ一つの出会いの中で新しいことを学んだり、吸収したりしていくことが大事だと思いますね。

      ────近年は、企業側も時間をかけて新人を育てていく余裕がなくなってきています。育っていくためにはどの様なことが必要だと思いますか?

      大学も結局、学生自身に「学びたい」っていう気がないと、授業をさぼりだしたり、モチベーションってどんどん下がっていくところがあるんですよね。ですので、社会人になっても、一つ仕事が終わったら「この仕事を下さい」っていうのを自分からどんどんやっていかなくてはいけないのかな、と思っています。

      あと、そうしていくためには"チーム"って、すごく大事だと思うんです。就職活動中も人事の方に「一番いいチームを組める会社に行きたいです」っていうのは、いつも言っていて。色んな人とチームを組んで、知恵を出し合って、仕事を進めていける様な環境が大事なのでは、と思っています。

      ────渡邉さんにとって、「仕事をする」とは、どういうことだと思いますか?

      まだ、スタートラインに立ってもいないので、今の時点での考えなんですが、仕事をすることって、"わくわくすること"だと思っています。きれいごとの様ですが、"仕事=お金を得る"だけではなくて、その分の働きをするのは当然なんですが、そのことを通じて、どれだけ新しい発見ができるかが、とても大事だと思っています。それが、どんなに小さなことでもいいので。1+1=2、という世界だけではなくて、自分なりに新しい価値を見出す事って、すごくおもしろいことだと思うんですよね。

      これからの人生、ほぼ、働くことに時間を費やすことになります。だから、"わくわくすること"ってとても大事だと思っているんですよね。

      ────渡邉さんにとって、「育つ」ことは、自分が経験したことのない新しいフィールド、自分にはない新しい価値観に出会うことが重要なポイントなんですね。これから先、大変なこともあると思いますが、頑張ってください。本日は貴重なお話、ありがとうございました。


      インタビュー後記


      「固定観念なく新しい経験、新しい価値観を受け入れることができて羨ましい」渡邉さん のインタビューを通じて率直に感じたことです。「最近の新人は...」とついつい口にしてしまう管理職の方も多いと思いますが、"育てる側"は十把一絡げにしないことが大切だと思います。「ゆとり世代」等という言葉で括ってしまうと、例えば渡邉さんの"新しいことに対する柔軟性"の様に、今の若者だから持てる"良さ"は見えてこないと思います。ただ一方で、"育つ側"は簡単にめげないで、会社や上司に受け入れられる様に努力する姿勢が必要です。自分の全てをそのまま受け入れてくれる会社はなく、また、企業や組織の論理に合せて自分を変えていくことで、人は成長していくからです。
      "奇跡の一本松型"日本生産性本部は今年度の新入社員をこう評価しています。厳しい就職戦線を戦い抜いたことを称えると共に、想定外の事態に直面しても困難を乗り越えていってほしいという期待が、その背景にあります。渡邉さんをはじめ、新人の皆さん、壁にぶつかっても臆せず頑張ってください。そして上司の皆さん、色眼鏡にかけず自分の部下一人一人を見て、厳しく育て上げてください。

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      聞き手:OBT協会  海津茂史

      OBTとは・・・ 現場のマネジャーや次世代リーターに対して、自社の経営課題をテーマに具体的な解決策を導きだすプロセス(On the Business Training)を支援することにより、企業の持続的な競争力強化に向けた『人財の革新』と『組織変革』を実現している。