OBT 人財マガジン

2011.08.24 : VOL122 UPDATED

人が育つを考察する

  • 独り歩きする"グローバル化" ―"我が社なり"の定義はあるか―

    価格下落、利幅の減少、縮みゆく日本市場 ... ...
    ジリ貧状態から脱するため、海外進出を急ぐ日本企業。

    経営方針に「グローバル」を掲げる企業はこの1、2年で激増しましたが、反比例
    する様に、"グローバル化"という言葉が独り歩きしていることを強く感じます。

    人財の側面では、"グローバル化"に対する打ち手は大抵、次に絞られるように思います。

    ◇育成(教育):語学やコミュニケーション、異文化の学習、早期の現地配属
    ◇採用     :海外人材の採用

    これらは重要ですが "=グローバル化" なのかといえば、
    必ずしも、そうとは言い切れないのではないのでしょうか。

    なぜなら、海外売上比率50%以上を上げ、
    世間的に「グローバル企業」と言われていても、
    「我が社では"グローバル"という言葉を聞いても、
      人や組織によって
    認識の仕方が未だにバラバラ」
    というお話を担当者様から、聞くことがあるからです。

    では、何が足りないのか。日々の仕事を通じて感じることが一つあります。

    それは、例えば、
    「我が社にとってグローバルでビジネスをすることとはどういうことなのか」
    等といった本質的なテーマに対し、会社を上げて深掘りする取り組みが未だに
    少ないことです。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    先日、国内トップクラス、世界の売上シェアでも10位以内に入るメーカー様にて、
    課長職を対象にトレーニングを実施した時のこと。

    同社の市場規模は20年後に100兆円を超える予測が経っていますが、
    全体の2割にも満たない領域で新興国を含めた多くのメーカーがせめぎ合い、
    残りの8.9割は、管理・運営事業を主体とする欧米企業が占めています。
    経営トップからのオーダーで、次の問いに対して答えを出す事がトレーニングのテーマと
    なりました。

    「海外の売上比率を高めた時、我が社はどの領域で、
      何処を相手に、どの様な戦い方をするのか」

    選抜された10名の課長は次期経営リーダーとして学習を進めながら、
    この問いに対する"より妥当な答え"を導き出します。

    特に初回のトレーニングでは、以下が議論の焦点に。

    「汎用化、国際規格(標準化)このままが進んだ時、
      我が社の"技術力"は優位性足りうるか」


    【トレーナーを交えての参加者の議論】

    「"技術の流出"などと言っている場合ではない。汎用品という潮流は避けられない」
    「地場企業、特に韓国、ブラジルメーカーのコスト競争力の脅威。
      ただし単純に高級志向にいけば、勝てるかと言えば極めて疑問」
    「国内市場が主戦場だったからこそ、我々で仕様を決める事ができた。
      国際規格が基準になった今、以前の優位性は通用しないのではないか」

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    成長市場を求める企業にとって、「海外進出」は避けて通れない道。

    しかし、「国外に出る」目先の対応を急ぐあまり、本質的なテーマは
    手薄になっている様に感じます。

    「我々で言うグローバル化とは何か」

    一朝一夕で答えは出ませんが、この様な本質的なテーマを深堀し、
    我が社なりの定義を持つ事が本当の意味で、海外で通用する力、
    競争力に繋がるのだと思います。