OBT 人財マガジン
2011.05.11 : VOL115 UPDATED
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台湾の人財育成事情から学ぶ
現在我が社では、台湾から日本の文化を学ぶために、昨年の5月より来日している女性が在籍しております。そのため今回の現場ドキュメントでは、日本を飛び出し、海外(台湾)の教育事情についてレポートしたいと思います。■背景
2010年の経済成長率は、09年度のマイナス1.93%から10.82%と24年ぶりの高い成長であった。(過去30年間の経済成長率は8%の水準で推移。)中国に比べると劣るが、日本や欧米に比べれば高い水準である。台湾の主力産業は、半導体を初めとするIT関連部品の生産。パソコンの基盤(マザーボード)や液晶ディスプレイなどで、生産高世界一を誇っている。しかし、高成長を続けている台湾経済だが、実は大きな弱点も抱えている。台湾の国土は日本の九州程度で資源に乏しく、人口も約2300万人なので内需も期待はできない。これまでは安い労働コストを武器にIT・半導体関連の生産で稼いでいたが、将来的にはより安い労働力の国々(例えばベトナム・フィリピン・インドなど)に生産拠点を移され、シェアを奪われる可能性は否定できない。(BRICs辞典より)そんな中、2009年台湾国内の中小企業は123万社を超え、全体企業の97.7%(日本の中小企業の割合は99.7%)を占めている。その中小企業はというと同族経営、経営者のワンマン体質といった特徴もあるが、人財が企業に定着しないという。人財が定着しない理由として挙げられるのは、① 生産製造方面では、経済規模が小さく、設備も不足で、原材料の価格変動の影響を受けやすい。② 研究開発方面では、人手が足りなく、また資金不足に陥っている③ IT産業は景気に大きく左右される業種で、収益が安定しないこういった点からも、中小企業の経営が不安定に陥りやすく、社員への保障がされておらず、社員が長い期間一つの企業にとどまるということはなく、すぐに退職してしまう傾向にある。そのため、企業が人財へ教育をするということがあまり行われていない。(教育をしても、転職をされてしまう恐れがあるため)そのため、企業では日本のように1から育てるという意識はあまり無く、雇用時に重視している点は即戦力と経験となっている。会社が社員に勉強して欲しい領域としては1.専門技術(83.6%)2.マネジメント(55.0%)3.コンピュータースキル(41.5%) ※複数回答可初めの台湾の背景でも述べたが、世界のノートパソコンの多くが台湾で受注生産・組み立てされている。そのため、世界のITの景気に大きく左右される業種で、収益が安定しないことも問題となる。そこで、現在では台湾独自のブランド製品の開発にも力を入れている。そのメーカーがASUS(アスース)やACER(エイサー)などである。上記のことからいえることは、個人は企業での経験を活かし、自身で自ら学ぶということが重要になってくる。そして、企業ではいつまでも下請けでは生き残れないという危機感から、今まで培ってきた技術力を活かし、新たな価値を築きあげていくという仕組み成り立ってくる。今まで、恵まれた環境下にいた日本。教育や仕事は常に会社から与えられ、それをこなしていくという受身の体制になっていないだろうか。特に、教育というのは企業が社員への投資として莫大な費用を費やしている。こういった台湾の企業の体質からも今後企業での自身のあり方を学ぶべきなのではないだろうか。
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