OBT 人財マガジン

2010.10.27 : VOL102 UPDATED

人が育つを考察する

  • 変化の時代におけるマネジメント

    今回の現場ドキュメントのテーマは「変化の時代におけるマネジメント」です。

    ●顧客企業様の問題意識

    ・「今の管理職が置かれている状況は確かに過酷です」とした上で、
     「これから5年先、10年先を考えると、現状業務を回すだけでは立ち行かない」
     「管理者の役割が部下の仕事の延長線上であること、
     管理評価にとどまってしまっている今の状態を危惧している。」
     「会社側も支援する中で、管理者を軸に新しい価値を生み出せる体制へと変えていきたい」
     というお話が担当者様からあり、この企画がスタートしました。

    ●訴求点

    ・限られた時間の中で何に訴求するか。何度も議論を重ねる中で、
     「我々の今のやり方は時代の変化に本当に適応できているのか」という一点に絞り、
     ①自社を取り巻く環境がどれだけ大きく変わっているか
     ②その中で、自己に求められる役割は何か、を捉えなおす
     という内容で実施しました。

    ●トレーニングシーンから  ...印象に残った場面を二つご紹介します。

    【見え方の差は"賢さ"の差】
     ・「自社を取り巻く環境変化」についてグループディスカッションをしたところ、
     ・経済・社会 ・自社事業の変化 ・顧客の変化 ・社内の状況 ・部下や組織の状態
     等の切り口から、様々な意見が上がりました。

     この議論を聞いて印象的だったのは、注目する変化の要因や影響の捉え方(範囲や
     対象、影響の度合い)が、人によってバラバラだったことです。

     「同じ状況に置かれていても、人も企業も"見え方"に差がある」
     「"見え方"によって打ち手が変わる(例えば、どの様に市場を捉えるかによって戦略が
      変わる)」
     「"賢さ"とは"見え方"のこと」 という講師の言葉の後、
     ・見たくない現実を含めて、より広く変化を捉えること、そして、筋道を立てて自己に結
      びけること(論理性)
     ・目先のことばかり追っている自分に気づいた。今のやり方の延長線上では、通用しな
      くなることを認識しなければならない。
     という意見が参加者から、上がりました。

    【いま、管理者に求められる要件とは】
     ・日々、多くの企業で実施されている「マネジメント研修」。
      しかし、変化の時代において、そもそも管理者には何が求められるのでしょうか。

     「今の時代、管理者に求められている要件」を参加者が考えた結果、
     ①人間関係 ②目標に向かい行動すること ③与えられた課題を着実にこなす
     という項目が上がりました。

     しかし、多くの経営者を対象に取ったあるアンケート調査によると、「管理者に求める要
     件」として、①視野の広さ  ②主体的な意思・課題形成力 ③柔軟な発想、対応とい
     った項目を優先度の高いものとして上げていました。

     実は参加者が上げた「人間関係」「目標に向かい行動すること」「与えられた課題を着
     実にこなす」といった項目は、約20年前、同調査で上位を占めた項目でした。
     
     20年前のキーワードは「所与」。
     つまり「どうやればうまくいくか」が読め、それを遂行することをよしとする時代でした。

     一方で、今の変化の時代におけるキーワードは「自ら創る、提案すること」。
     「どうやれば成長できるか」経営トップでさえ、先行きを読めない時代においては、リー
     ダー自らが提案していかなければなりません。

     結果を見た参加者からは、
     ・わが社には"20年前の"リーダーが半数以上。いままでの業界内の常識を出ていない。
     ・経験則。手慣れたやり方に浸りきっている。提案をあきらめてしまう傾向が全体にある。
     という意見が上がりました。

    ●最後に
     「人材」は多くいるが、変化の時代を戦える「人財」は少ない―
     先に上げた経営者が「管理職に求める要件」を調査した結果では、この様な回答結果も
     出ていました。
     
     しかし、「変化の時代に対応できるマネジメントとはこういうやり方です」「これをやれば
     間違いない」という秘策や正解はありません。

     「我々のやり方は本当に時代に適応できているのか」を問い続ける環境、そして、従来
     型のやり方を見直し軌道修正していける土壌を、教育機会を契機に、どれだけ創れる
     かが、これから先、重要なのだと思います。