OBT 人財マガジン
2010.05.26 : VOL92 UPDATED
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自己のマネジメントを客観視する
今回の現場ドキュメントは、課長職を対象に「自己のマネジメントを客観視する」
というテーマで実施したトレーニングをご紹介します。
【目的と導入背景】
このトレーニングでは、周囲からのアンケートを題材に、自己の主観的な評価
ではなく、普段関わっている上司・部下からの客観的な見方をもとに、自己の
マネジメントが組織やそのパフォーマンスに与える影響を明らかにすること、そして、
改善に向けて、取り組むべき変革ポイントを明確にすることを目的としています。
実施された企業様では、以前から外部団体のツールを使って、360度サーベイを
用いた研修を内部で実施していましたが、「成果に結びついているかどうか疑問」
という、御相談がありました。
打ち合わせの段階で、次のような問題点を共有し、クリアした上でトレーニングの
実施に至りました。
●測定する基準が不明瞭
・外部団体が設けた画一的な基準や、リーダーシップ論で述べられている様な、
抽象的な基準で測定しているため、「我が社が求める管理職」という
基準から充足すべき点が見えてこない。
※そこで、協議を重ねた上で我が社が求める課長職像(コンピテンシー)に基づいて、
評価をとる。また、数値的な評価だけでなく、より現実を映し出すためにフリーコメントをとる。
●介入するファシリテーター(トレーナー)
・今までは介入する人間がオペレーションに留まっていた。マネジメントの豊富な経験やビジネスマン教育を手掛けた経験がない。また、「大人がどうすれば学ぶか」
「人がどうすれば変わるか」等と言う事を体系的、知覚的に理解していない。
【トレーニングから学んだこと】
全体の傾向としては、業務遂行能力は自他共に高い評価で一致している一方で、
組織全体に対する影響力、また、部署を超えた組織横断的な取組み、全社的な
対応と言う点では、特に部下の方々から相対的に低い結果が出ていました。
また、トレーニングを実施する中で、自己認知(普段、自分が思っている自己の
在り様)と、他者認知(周囲から見える自分)の間にギャップを感じると、参加者
からは、自己を正当化するような言動が多々みられました。
「部下が育たないので、仕事を任せられない」
「自分も業務に追われている状況」
「上位層から降りてくるのは数値目標だけで、具体的な指示は出てこない」
「そもそも変化する外部環境に会社の構造自体、対応しきれていない」等々...このトレーニングを通じて学んだことは、二つあります。
一点目は、自己の現状をまずは認識する重要性です。
自分はやっているつもり...、という「つもりの自分」ではなく、周囲から見える自分を受け止め、見たくない事も含めて、"何が不足しているか"を認識する重要性です。
自分の胸に手を当てて考えてみても、周囲の見方と自分との認識に違いがあれば
「そうは言っても...」と、ついつい現実を回避してしまいがちです。これは一見、正論の様ですが、これでは前進しません。
まずは、「自身の問題」と一旦受け止めて、内省を深めない限り、成長への活路は見えてこない様に感じました。
また、もう一点は、「これは課長職個人だけの問題なのだろうか」と言うことです。
浮かび上がった問題の背景を読み解き、解決に向けては、組織的にも取り組む必要性があるのでは、と思うのです。
トレーニングを通じて浮かび上がった課題は、課長職当人が及ぼす影響も大きい
ですが、この様な現状を生み出してしまった背景や要因を、会社側としても真摯に
受け止める必要性がある様に思います。
2,3日のトレーニングだけで、人が変わる事はありません。
また、例え変わったとしても、職場に戻れば、職場の現実があり、ここが変わらない限り、参加者は時間とともに、従前のスタイルに立ち戻ってしまいます。
トレーニングを契機に、組織的に事態を改善していく姿勢が重要だと思います。
しかしながら、日々、様々な企業を御伺いする中で感じる事は、
「研修を実施する」ことで終えてしまっていること、
また、特定の層、個人に問題があるという前提が常態化していることです。客観視の重要性-
参加者が自身の現実と向き合う事もさることながら、
人財開発等の企画側をはじめ、会社側が、自社の構造を客観的に認識する事が、
真に実効をあげる上で、求められていく様に思いました。
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