OBT 人財マガジン
2008.03.12 : VOL41 UPDATED
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【企業組織変革と人事戦略】 ③事業部制と人材育成
日本において初めて事業部制を採用した会社は松下電器と言われています。1993年に、工場群を3つの「事業部」に分け、ラジオ部門を第1事業部、ランプ・乾電池部門を第2事業部、配線器具・合成樹脂・電熱器部門を第3事業部とする製品分野別の自主責任体制を敷きました。この事業部制の狙いについて、創業者で発案者でもある松下幸之助氏は、「自主責任経営の徹底」と「経営者の育成」の2つがあると指摘しました。事業部制は、この2つの面でその真価を発揮し、松下電器が今日の大をなす要因となりました。事業部制とは、「一つ一つの事業部と称される単位が、製品別、地域別などの単位に分化して、それぞれがどれだけの利益を上げねばならないかという利益責任をもった組織単位(プロフィットセンター)から構成される経営組織」のことです。言い換えると、同じ一つの会社の中に収支も別、決算も別、資産も別々に持つという独立したいくつもの会社が、できているようなものです。まさに、それぞれの事業部が、「自主責任経営」を行っていく組織と言えます。一般的に、企業規模が大きくなると、その弊害が認識され、事業部制を採用し、事業部内で自己完結的に職能を満せるように、また顧客に近いところで迅速に意思決定し、小回りを利かせられるようになり、さらにそれが進むと社員一人一人が「一人事業部」になるという発想が求められます。組織運営上、特定の職能を担うことが中心業務になるとしても、自社の行っている事業及び業務全般についての自己完結的な知識は求められます。顧客や外部の視点から見れば、企業の社員が顧客あるいは外部に接する時、その社員は対外的にその企業を代表していることになります。その意味では、社員一人ひとりが「部門経営者」に育っていく仕組みであるということです。「経営者の育成」という観点では、松下幸之助氏は『経営百話』の中で、「ある人になにか仕事を任せる場合、適切かどうか色々あるがまず60%やったら任せる。80%やったらいいけれども、それでは遅いし人は育たない」といっています。人材育成は、中小企業においては悩みの種です。特に、競争心や目標を持たせるのが難しいという点です。たしかに、中小企業では、若くても大きな仕事を任せられるという人材育成上の利点もありますが、人材の絶対数が不足しているため、競争が起きにくいからです。大企業なら、能力不足を露呈すると、自分にとって代わる人材が社内にいくらでもいるという危機感が、社員間の競争心につながっています。しかし、中小企業の場合は一人一人の重要性が大企業以上にあるため、たとえのらりくらりと仕事をしていても、会社は自分をはずせないはずだという計算が社員に働きます。問題は、各人材を特定の職能に限定してしまうところにあります。より多くの人材が、より多くの職能に通じるようになれば、「切磋琢磨」の仕組みが整っていきます。中小企業では、事業部制という組織体制にするには規模的に問題がありますが、むしろ「一人事業部制」という発想で、各人の職能編成を考えてみるということはできるのではないでしょうか。事業部制型人材育成を、中小企業の人材育成に生かすことはできます。以上On the Business Training 協会 栗田 猛*続きは後編でどうぞ。
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