OBT 人財マガジン
2008.01.30 : VOL38 UPDATED
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中途採用の現状
中途採用は劇的に変化しています。以前は欠員補充的な中途採用が目立ちましたが、昨今は採用目的も複雑なので、場合によっては新卒採用に比べ一層難しくなってきているというのが実感値です。まずはその背景を整理してみましょう。
■中途採用を取り巻く背景
バブル経済崩壊後、多くの企業が組織のスリム化や経営の効率化を実現しようと奮闘してきました。どの環境下にあろうとも、人件費のあり方について見直さない企業などないと思いますが、この時期はとりわけシビアに生き残りをかけて整理したのです。
仕事を業務特性から棚卸して、自社特有性が大きく、競争優位性を生み出すコア業務と、定型的業務とを分け、それぞれをどのような人材で担うべきか、その報酬や評価はどうあるべきかを再構築しました。一方では、必要なときに必要なだけ必要な人材をとの考えの下、派遣社員や業務委託、アウトソーシングを多くの企業が活用し、専門業務においては自社雇用するよりも効果が見込めるなどのベネフィットがあるため定着しています。
そして採用に関して何が起こってきたかと言えば、社員採用を手控え、自社雇用する際には「厳選採用」を敢行し、少数精鋭型組織と移行しました。
結果、企業は収益を上げることに成功しましたが、人材が背負う仕事の負荷は大きくなり、また雇用形態の多様化も相まって、一人ひとりの仕事はより高度になりました。それに伴い企業が人材に求める要望はとても高くなったのです。
そして、迎えた団塊世代の大量流出。2006年から6年間で定年を迎える人口1000万人に対し2006年から6年間で成人する人口は650万人、その人口差は350万人に上ります。
日本の若手就労人口の減少や企業のビジネスサイクル・事業計画の達成のスピードから多くの企業が急激に中途採用にシフトしてくることが予想されます。
現に、今まで新卒採用メインの大手企業が、多職種で大量~少人数の中途採用を始めています。もともと企業が欲している人材は成果を出せる人材であり、そのような人が中途採用市場で顕在転職者として潤沢に存在するはずはなく、企業の都合では優秀な人材確保はできないという実態です。
■中途採用の前提が変化している
採用難を解決するために、性別、年齢、民族や人種、障害の有無など多様な属性の人たちを受け入れ、活用するダイバーシティー採用も当たり前になっていきます。
並行して、労働法は性別・年齢不問となり、賃金制度の改定や休日・休暇制度の拡充も当たり前です。その中で独自の企業競争力を生み出すために、新卒ではなく、職務経験がある中途人材を採用するとはどういうことなのか?
新たな企業成長や変革を担う即戦力として外部から採用するとはどういうことなのか?今後の人材戦略を考える上で、しっかりと認識する必要があります。当然ながら、企業と同様に採用対象者も、前述したような環境を経て仕事をしてきた人たちだと言うことです。仕事をしていない層にしても、「あっその仕事よさそう」と右から左に簡単には動いてくれません。
"その人独自の経験に基づいた"志向(指向)、求める環境、対価、モチベーションがあります。そして企業として平均的な労働条件(給与・休暇・待遇面での整備)が整っているのは当たり前になっていますから、待遇データでの差別化は難しいでしょう。フリーターやニートが増加している今の日本の社会現象からも、物質的な豊さを経て今に至ったという点においても、目的や意義の追求が私たちが生きる上で不可欠になってきています。就労条件だけではなく、本人が働く動機付けや意欲を喚起すること、つまりソフト面での「共感」が必要です。
■求める人材を想定した共感の接点づくり
同じ企業でも成長発展段階のどのステージにいるのかによって人材に求める要件も違ってきます。例えば、草創期と第2の創業期と言われる変革期は似ているようですが、違います。
草創期の企業は、トップの強いリーダーシップの下、会社独自のビジネスモデルをはじめ業務の流れや仕組みを一から構築しながら、何事にもスピーディーに対応していける個人や組織が必要です。
個人の役割分担もそれほど明確ではなく、場合によっては役割が入れ替わったり戻ったりします。
平たく言えばトップの意志を分かち、柔軟でかつ速く確実に動ける同志採用となります。これに対して変革期は、抜本的な変革が求められるとは言え、従来のビジネス構造や仕組みを踏まえた上での「新生期」を作ることになります。自分の提案やアイデアを現実レベルに落としながら、人を巻き込み主体的に物事を推進する力が秀でた人材や、中長期で成果が出るシナリオが描ける力が必要となります。
求める人物像を設定するときに参考にするといいと思います。それから同じ職種でもポジションによってアプローチが変わることは言うまでもありません。メンバークラスとリーダーやマネージャーを採用するのには、本人が知りたい情報や共感の接点を作り出す内容が違いますよね。
また世代観で言えば、今の20代が価値観形成に費やした時代はバブル崩壊後です。かつて経済大国、技術立国であった日本に対してのリアリズムはありません。どちらかと言うと、周囲の大人がリストラされたり、情報は無料でネットなどから仕入れるなどのように、積み上げてきたものや積み上げ方が一瞬にして変わってしまう経験をしてきた人です。新しいモノに対応する力はあるかもしれませんが、皆が皆そうでしょうか?
また現34歳が新卒のころの大卒求人倍率は1.08倍、30歳は0.99倍、29歳は1.09倍ですが、苦労して社会に出た可能性が大きいと一概に言えるでしょうか?
どの媒体を使って採用告知するのが有効なのか、メディア特性も踏まえた選定をするとなると・・・。媒体数は10年で約3倍になっているそうですから把握しきれませんよね。どれも曖昧な確率論です。
故に、共感の接点作りくらいは力を抜いてはいけません。他社にはない強みや他社との差別化となるコアコンピタンスは人が生み出すものです。そのコアコンピタンスは、「どんな人材」ならば日々の仕事に落とし込めるのか、日々の仕事に目的と意味を見出し続けられるのか・・・その企業や事業や風土や人にヒントがありますが、共感があればこそ、その企業で働く自分像を選択できるのです。
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